抄録
血液は、粒子を含んだサスペンション流体の一種である。そのため血液の流れ方次第では、赤血球の慣性力が周囲の流体の粘性力に比べ大きくなり、赤血球が壁面へ衝突することも考えられる。そこで本研究では、赤血球の人工臓器壁面への衝突による溶血の影響を調べるため可視化実験およびin-vitro実験を行った。可視化実験は、血漿および赤血球と同比重の関係になるサスペンション流体を使用し、障害物付近での粒子の挙動観察を行った。in-vitro実験では、可視化実験に基づき血液を表面粗さのある面に噴流させ、衝突時の血液の流速と溶血の関係について定量評価を行った。その結果、可視化実験では、血液のようなサスペンション流体において、ある流速を境に粒子が障害物へ衝突することが観察された。in-vitro実験においては、流速300cm/sから顕著な溶血が観察された。このことから流路形状によって生じる赤血球の人工臓器壁面への衝突は、赤血球破壊に大きな影響を与えるものと考えられた。