抄録
人工肺表面にヘパリンを固定化し、ヒト血液を用いてin vitro循環実験後、吸着蛋白質の解析を行った。循環中の血小板数、白血球数、PMNエラスターゼ、C3aの濃度から、ヘパリン化表面は、血小板、白血球、補体の活性化を抑制することが明らかとなった。4時間の循環後、生理食塩水で人工肺を洗浄し、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含む抽出液で抽出を行った。抽出液のSDS-PAGEによる蛋白質の分析から、ヘパリン化、未処理表面両方の吸着蛋白質は、血漿の蛋白組成と異なっており、表面の化学的性質が、蛋白質吸着に影響を与えていることが示された。Immunoblotにより蛋白質の同定を行ない、ヘパリン化表面には、アンチトロンビンIII(AT III)、apo E、Clq、factor H、Clエステラーゼインヒビター(CIINH)、C3aが特異的に吸着していることが明らかとなった。吸着量は、Clqが最も多く、全体の約50%を占めた。ヘパリン化表面の凝固系の抑制には、AT III、補体系の抑制には、factor H、CIINHの吸着が関与している可能性が示唆された。