人工臓器
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ヘパリン濃度コントロール下におけるヘパリンコーティング常温体外循環
凝固・線溶系と血小板機能
上屋敷 繁樹染谷 忠男橋本 和弘
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1999 年 28 巻 2 号 p. 377-382

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抄録

血中ヘパリン値を頻回に測定し, 非ヘパリンコーティングとヘパリンーコーティング肺・回路とで血中ヘパリンレベルを同様にすべくコントロールを行ない, 同一条件下における凝固・線溶系, 血小板数・血小板機能を両群にて比較検討した.術前抗凝固剤の投与がなされていない39例に常温体外循環を行ない, さらにHepconにて体外循環 (CPB) 中に血中ヘパリン濃度管理を行なって, 一定の血中値3.0-5.5IU/mlを保ち, 設定値よりはみださなかった26例 イオン結合型 [Duraflo-II, 以下D群] 8例, 共有結合型 [Hepaface, 以下H群] 8例, 非ヘパリンコーティング [Sorin, 以下S群] 9例となったで, 以下のデータを検討した.血中ヘパリン値に加え, 凝固の指標としてFibrinopeptide A (Fib A), 線溶の指標としてD-dimer, 血小板数に加え機能の指標として血小板活性化因子 (Platelet Activating test: PAF) を測定した.結果として (1) ヘパリン濃度は3群間にて有意な差はなく, CPB開始時4.6-4.9IU/ml, 大動脈遮断解除後3.4-3.6IU/mlと適性値を維持した. (2) D-dimerは有意差はないものの, H群にて少ない傾向を示した p=0.1 (0.3). (3) Fib AはCPBスタート時から大動脈遮断解除時までS群に対してヘパリンコーティングのD, H群にて有意に低値であった (P<0.05). (4) 血小板数はCPB中を通してヘパリンコーティングのD, H群が多い傾向 (p=0.1-0.3) を示し, protamione投与時には有意に高値であった (p<0.05). (5) PAFはAOclamp, protamine投与時においてD, H群にて有意に温存されていた (p<0.05).結語: ヘパリンコーティング心肺回路は凝固, 血小板数・機能保持の面で有利であった.

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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