2000 年 29 巻 2 号 p. 441-445
分子インプリントは, 抗体のような基質特異性を持たされた合成高分子であり, センシング用または分離用デバイスとして有望である。我々は, インジウムースズ酸化物 (ITO) の表面に, テオフィリンに対する分子インプリントの薄膜を形成した。そして, この処理を施したITOを用いて試験液中のテオフィリンの存在下または非存在下でフェロシアン化物のサイクリックボルタメトリーを行った。その結果, 分子インプリントの存在によってフェロシアン化物の酸化電流は著しく増大した。この結果は, 鋳型分子の存在によって分子インプリント薄膜は拡散溶質透過速度を増大させることを示唆している。一方, 鋳型物質の存在によって分子インプリント薄膜の表面開孔率が増大することが, 原子問力顕微鏡で確認された。これらの結果より, 分子インプリント薄膜は鋳型物質の共存によって, その構造および溶質透過性を変化させることが示唆された。