日本透析医学会雑誌
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症例報告
約5年間安定して外来慢性血液透析を施行できたコレステロール塞栓症による末期腎不全の1例
菅原 宏治武田 一人三浦 修平福田 拓也飛野 杏子若杉 大輔
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2007 年 40 巻 2 号 p. 183-188

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抄録
症例は72歳男性. 以前より狭心症と高血圧があり, 2000年7月7日当院循環器内科にて心臓カテーテル検査を施行した. 3枝病変と診断し, 同年7月14日経皮経管冠動脈形成術 (以下PTCA) およびステント留置を施行した. 同年8月10日頃より両下腿に及ぶ網状皮斑および両足趾痛があり, 8月16日精査加療目的で当院循環器内科に入院した. 8月17日皮膚生検にて, コレステロール塞栓症と診断した. 前回入院時血清クレアチニン値 (以下Cr) は1.1mg/dLであったが, 8月25日Cr13.6mg/dLと腎不全が進行したため, 高度医療目的で他院へ転院した. 同日より血液透析を開始した. 透析中の抗凝固薬としてヘパリンナトリウムを使用したところ, 両足趾の疼痛を伴う壊死領域および網状皮斑が以前より増悪した. 抗凝固薬をメシル酸ナファモスタットに変更し, 網状皮斑は改善したが, 好酸球増多は持続した. プレドニゾロン (以下PSL) 40mg/日 (0.6mg/kg/日) の投与を開始し, 好酸球増多は速やかに改善した. 2000年12月12日黒化した両足趾の切断術で疼痛も改善し, PSLを徐々に漸減し, PSL10mg/日に減量した時点で同院を退院した. 2001年1月20日当院へ転院し, 透析中の抗凝固薬を低分子ヘパリン (以下LMWH) に変更し, 外来血液透析を施行した. LMWHでの血液透析およびPSL10mg/日の投与で, 約5年間生存した. コレステロール塞栓症により血液透析導入されたケースは極めて予後不良と報告されているが, LMWHを使用した血液透析およびPSLの使用により, 長期生存を得られる可能性があると考えられた.
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© 2007 一般社団法人 日本透析医学会
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