抄録
マルチワイヤソー方式とは,ワイヤ工具とスラリー(砥粒とベースオイルを懸濁させた加工液)を用いてシリコンなどの硬脆材料をウエハ状に切断する加工法である.従来,本方式では細いピアノ線とGC砥粒を用いることによって,太陽電池のウエハの基盤材料であるシリコンインゴットの切断加工に用いられているが,変換効率の向上や生産コスト削減のために,さらなる高精度加工が求められている.そこで,本研究では,工作物として単結晶および多結晶シリコンを用いて切断加工を行い,ワイヤや砥粒,シリコンの結晶構造が加工特性に及ぼす影響について検討を行った.その結果,ポリウレタン系の樹脂をコーティングしたワイヤとダイヤモンド砥粒を用いることによって,ウエハに鏡面が得られるまで表面性状が向上することを明らかにした.