抄録
放電加工された工作物は,加工面に生じたマイクロクラックや微小孔,放電痕などにより機械的強度が低下する.しかし,微細加工の領域で放電加工条件が工作物強度に及ぼす影響についてはほとんど調べられていない.そこで本研究では,直径10μmの超硬合金微細軸を放電加工により製作し,その強度試験を行った.軸強度は仕上げ加工における放電エネルギが低くなるにつれて向上する傾向がみられたが,放電エネルギをさらに低くすると逆に低下した.その理由として,低放電エネルギでは除去体積が小さくなるので,前工程までで生じた表面欠陥が除去しきれていない可能性が考えられた.さらに,強度試験の結果をもとに,放電加工により製作された極小径切削工具の長寿命化を試みた.直径10μmの超硬合金半月形工具を製作し,それを用いて穴あけ加工を行った結果,軸強度の高い放電加工条件で製作された工具には長寿命のものが多くみられた.