抄録
光学部品などの射出成形用金型の長寿命化を実現するため,ダイヤモンド工具による超硬合金への微細V溝加工を施すことが本研究の目的である.まず,V溝切削時における工具のすくい角について幾何学的に検討した結果,V型工具を用いて同一溝を多数回切込むプレーナ加工の場合,刃先部を除けば切れ刃稜の部分で3次元切削(傾斜切削)が行われていることから,付与すくい角,有効すくい角およびV溝の半角との幾何学的関係から,切削方向の有効すくい角を求める一般解を導出した.また,単結晶ダイヤモンド工具とナノ多結晶ダイヤモンド工具に,すくい角0°と-30°を付与した工具用いて,コバルトレス超硬合金の微細V溝プレーナ加工を行った結果,単結晶ダイヤモンド工具に比べてナノ多結晶ダイヤモンド工具の方が刃先後退量が小さく,また負のすくい角を付与した方が刃先後退量をさらに抑制できることがわかった.