抄録
現在までに,切削工具の摩耗評価のために刃先形状の複雑さとしてフラクタル次元を導入し,フラクタル次元の変化と刃先形状の変化について検討した.その結果,工具刃先は微小な欠けと平坦化を繰り返し,時折大きな欠けを伴いやがて寿命に達することが分かった.本報では,さらに実験を行い,工具刃先のフラクタル次元による評価と工具寿命との関係について検討した.その結果,サーメット工具を用いたSCM435Cの切削実験から,寿命近くではフラクタル次元の値がすくい角により異なり,すくい角が0°のとき1.18,14°のとき1.16であった.このことからすくい角が小さいと微小な欠けが多く発生し,寿命を向かえ,逆に大きいと欠けの規模が大きくなり,やがて寿命をむかえることと一致する傾向であった.また,従来からの逃げ面摩耗幅,切削抵抗,せん断角との比較したところ,フラクタル次元は寿命近くでは安定しており,寿命予測には有効なツールであることを示せた.