2023 年 67 巻 3 号 p. 150-156
工具表面の研磨の有無によりダイヤモンド砥粒の突き出し高さが異なる2種類のPCD工具を用い,両者による単結晶サファイアの加工特性の差異を検証した.未研磨のPCD工具を用いて,切込み量0.2 μm,送り速度2 mm/minで加工した結果,算術平均粗さ3.2 nmRa という高品位加工面が得られた.研磨を施したPCD工具においては,脆性破壊による加工が主体的となり,加工後表面の算術平均粗さは242.4 nmSaであった.長距離加工後の工具表面には強固に凝着する付着物の存在を確認した.アルカリ基水溶液中における電解作用を援用したリコンディショニング法により,工具表面に存在する付着物を除去し得た.さらに,飽和水蒸気を用いたマイクロドロップピ-ニングによるリコンディショニングにより,工具表面の付着物は確実に除去されるとともに,同処理を施す前に比べ処理した後の方が高品位な加工面が得られ,付着物を除去する有効性を確認し得た.