抄録
ヒト異型肺炎の主な原因であるマイコプラズマ (Mycoplasma pneumoniae) は, 動物細胞や固形物の表面にはりつき滑るように動く “滑走運動” を行う。その運動は, 動きが顕微鏡下で一目でわかるほどに速いものである。マイコプラズマが宿主に寄生することに滑走運動は必須であるが, これまでにそのメカニズムが調べられたことはなかった。筆者らはもっとも観察の容易なMycoplasma mobile の滑走装置とタンパク質を発見し, 構造と, そこで起こっている反応を調べた。それらの結果から滑走運動メカニズムを説明するモデルを提案した。さらにその知見をもとに, Mycoplasma pneumoniae の滑走メカニズムの研究も進めている。マイコプラズマの滑走運動が, これまでに研究されたどんな生体運動とも本質的に異なっていることが明らかになった。