日本細菌学雑誌
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平成27年浅川賞受賞論文
細菌感染における酸化ストレスシグナル制御と感染防御論
赤池 孝章
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2015 年 70 巻 3 号 p. 339-349

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抄録

一酸化窒素(nitric oxide, NO)や活性酸素種(reactive oxygen species, ROS)は, 非特異的感染防御機構において重要な役割を演じている。細菌, ウイルス, 真菌といった病原体の種類の如何に関わらず, 感染病態においては, 誘導型NO合成酵素(inducible NO synthase, iNOS)が誘導される。iNOSは, 病原体の持つ様々な菌体由来成分が, 対応する病原体分子パターン認識受容体群(pattern recognition receptors)であるToll-like receptorによって認識されることによって誘導され, さらに感染に伴って産生される炎症性サイトカインやインターフェロンなどによって相乗的に誘導が増強される。iNOS誘導に伴って過剰に産生されたNOは, 感染局所のROSと反応し, パーオキシナイトライトなどの化学反応性に富んだ活性酸化窒素種となり, 特に細菌感染において, 強力な抗菌活性を発揮し, マクロファージ等の貪食細胞による自然免疫と感染防御機能に重要な役割を演じている。その反面, NOやROSは, 宿主の細胞・組織を損傷し酸化ストレスをもたらす。一方近年, NOとROSが生体の酸化ストレス応答の生理的なレドックスメディエーターとして機能していることが明らかになってきた。NOとROSによるレドックスシグナル制御は多岐にわたっており, 感染防御機構と感染・炎症が関わる病態を理解する上で重要な課題であるだけでなく, 感染症の新たな予防・治療戦略の構築に大きく貢献するであろう。


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