日本細菌学雑誌
Online ISSN : 1882-4110
Print ISSN : 0021-4930
ISSN-L : 0021-4930
総説
サルモネラ属菌のべん毛III型蛋白質輸送システムの構造と機能
南野 徹
著者情報
ジャーナル フリー

2015 年 70 巻 3 号 p. 351-364

詳細
抄録

多くの細菌は, べん毛と呼ばれる細胞外へ長く伸びる繊維状の運動器官を持っている。べん毛が細胞表層に構築される際には, べん毛基部に存在する独自の蛋白質輸送装置が細胞内で合成されたべん毛蛋白質をべん毛先端へと輸送する。輸送装置は6種類の膜蛋白質からなる輸送ゲート複合体と3種類の可溶性蛋白質からなるATPaseリング複合体から構成される。これらの他に, 輸送シャペロンが自身の輸送基質蛋白質に特異的に結合し, 効率よく輸送ゲート複合体のドッキングプラットフォームへリクルートする。輸送装置はATPと細胞膜を横切るプロトン駆動力を動力源に利用してべん毛蛋白質を輸送する。その際, 輸送装置はフック先端で起こるフック構築過程をモニターし, 配送すべき輸送基質蛋白質を選別する。本総説では, Salmonella enterica serovar Typhimuriumのべん毛輸送装置の機能と構造について, 最新の研究成果を交えながら詳しく解説する。


著者関連情報
© 2015 日本細菌学会
前の記事
feedback
Top