抄録
結核をはじめとする抗酸菌症はその患者数や死亡者数が多く未だもって極めて重要な感染症であり,最近ではHIV感染者における多剤耐性結核や全身播種性Mycobacterium avium complex (MAC)症が問題になってきている。本稿では,こうした抗酸菌症のうち,特に結核とMAC症とに焦点を当て,何故にこれらの感染症が難治性であるのかという問題について,特に宿主マクロファージ(Mφ)と抗酸菌との関わりあいに焦点を当て,(1)宿主Mφ内での感染菌の挙動,言葉を変えればMφ内殺菌メカニズムからの菌のエスケープという問題と,(2)抗酸菌感染Mφの殺菌能のサイトカインカスケードを介しての制御,特にMφ不活化サイトカインによるdown-regulationという2つの観点から論じた。約めて言えば,難治性慢性感染症としての抗酸菌症の特異な病像を規定するものは,抗酸菌の極めて強いMφ内殺菌抵抗性と免疫原性であり,これが故に必然的に誘導されるTh2タイプのサイトカインカスケードの活性化が抗酸菌症の難治化にさらに拍車をかけているものと言えよう。