抄録
愛知県では水稲品種「あさひの夢」においてセジロウンカの多発が確認されてきた.本研究はその要因を解明するために,愛知県の奨励品種である「あさひの夢」,「コシヒカリ」,「祭り晴」のセジロウンカに対する殺卵反応を調査した.その結果,「あさひの夢」は殺卵率が有意に低く,セジロウンカの多発は殺卵反応の弱さに起因していることが示唆された.次に,殺卵反応の弱さの由来を明らかにするために,「あさひの夢」の系譜上を中心とした25品種・系統の殺卵反応を調査するとともに,殺卵反応の発現に必須である殺卵遺伝子 Ovcに近接するRFLPマーカー分析を行った.その結果,インド型稲品種「Modan」と,その戻し交雑反復親「農林8号」から「愛知37号(青い空)」まで続く系譜上のグループと,「京都旭」から「あさひの夢」まで続く系譜上のグループの殺卵反応が弱いことが明らかとなった.特に後者は殺卵反応の弱い品種・系統が連続しており,そのほとんどが殺卵遺伝子 Ovcを有しない「IR24」と同じRFLPマーカー分析結果を示した.これらのことから「あさひの夢」の殺卵反応が弱いのは殺卵遺伝子 Ovcを有さないためであると考えられ,それが「京都旭」由来である可能性が示唆された.