抄録
本研究では,従来の穂発芽耐性育種の交配母本に加えて,種子休眠性が極めて強い「OS21-5」とその派生系統について,種子休眠性や人工降雨処理後のフォーリングナンバー,および胚のABA感受性を比較するとともに,北海道立北見農業試験場育成系統との交配集団を用いて種子休眠性の遺伝様式を推定した.「OS21-5」由来の遺伝資源「OS38-5」「OS68」「OS70」「OS71」は,15°C条件下の発芽試験においても,穂発芽性“難”の「AC Domain」より種子休眠性が強く,人工降雨処理後もフォーリングナンバーが低下しにくかった.「OS38-5」は,胚のABA感受性が低かった.「OS71」について,穂発芽性“難”の「北系春747」および“やや難”の「16S30」の交配に由来する分離後代の種子休眠性を調査し,F1個体種子における発芽試験の発芽粒淘汰に選抜効果が認められた.北系春747/OS71における種子休眠性に係わる遺伝因子は劣性が主体と推察され,F2-F3/F3-F4世代の遺伝率は0.66/0.67と高かった.一方,16S30/OS71の種子休眠性に係わる遺伝因子は劣性が主体と推察され,F2-F3世代の種子休眠性の遺伝率は0.19と低かった.北見春66号/OS70について,F2世代で穂発芽検定による選抜,次いでF3~F4で種子休眠性で選抜した結果,農業形質が改良された種子休眠性“極強”系統「18S8」と「18S9」が得られた.これら2系統は,「OS21-5」とその派生系統に比べて収量性,耐倒伏性,耐病性,製パン性が優り,交配母本として有用であると考えられた.