育種学研究
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原著論文
トランスポゾンを指標にしたコシヒカリ品種内の遺伝的差異
貴島 祐治堀田 夕夏石黒 聖也山村 和照塙 章内藤 聡佐野 芳雄
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2010 年 12 巻 3 号 p. 81-86

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抄録

特定の品種の中の遺伝変異やその発生過程については,殆ど知見がない.本研究では全国15府県から集められたコシヒカリ86集団を材料に,遺伝的な変異についてトランスポゾンの挿入位置を指標に調査した.3種のトランスポゾンの挿入位置を調べると,4集団の例外をのぞいて,コシヒカリ集団間での多型はきわめて少なく,品種の遺伝的同一性が保持されていることが示された.しかし,トランスポゾン mPingを指標にした場合,多くの多型が現れた.多数を占めたのは,コシヒカリの親である農林1号と農林22号にはない固有バンドからなる多型で, mPingがコシヒカリで転移していることを示すものである.その他の多型には,新潟以外の集団にのみ存在し,新潟由来の集団にはない2つのバンドが検出され,コシヒカリを新潟タイプと非新潟タイプ(福井タイプ)で明瞭に分けた.2つの多型バンドは両親に1つずつ存在するので,コシヒカリの育成過程で発生した遺伝的分離に基づくと考えられる.新潟では福井県農業試験場から分譲された育成過程のコシヒカリを独自で選抜したとされ,この期間に新潟タイプと福井タイプのコシヒカリの間に遺伝的な差異が発生したと思われる.

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© 2010 日本育種学会
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