育種学研究
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原著論文
RAPD分析により評価した在来アズキ系統の遺伝的多様性
伊勢村 武久石井 尊生齋藤 大樹野田 千代三十尾 修司上島 脩志
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2002 年 4 巻 3 号 p. 125-135

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抄録

日本, 韓国, 中国, 台湾, ブータンおよびネパールにおいて収集された在来アズキ203系統を供試材料としてDNAレベルの遺伝的変異を解析した. RAPD法により48個のプライマーを用いて解析した結果, 全部で413本の明瞭なバンドが検出され, そのうち97本のバンドで多型が認められた. これらのRAPDバンドを用いると, 供試系統のほとんどを識別することができた. そこで, 多型を示したバンドの有無について1-0データマトリクスを作成し, Simple matching coefficientを求めて非類似度を算出した. その結果, 各地域間の非類似度は, 地域内のそれよりも大きな値を示した. 特に, ブータン-ネパール地域の系統群と日本および韓国-中国-台湾地域の系統群との間において, それぞれ0.615および0.598と極めて大きな値が認められた。全系統間の非類似度をもとにUPGMA法によりクラスター分析を行ったところ, ほぼ日本, 韓国-中国-台湾地域およびブータン-ネパール地域に対応したグループに供試系統を分類することができた. これらのことから, 地域間での在来系統の交流があまりなかったことが推察された. また, 本研究では, 在来アズキ系統にはDNAレベルで大きな遺伝的変異が存在し, これらが今後の育種素材として有用であること, さらに, ブータン-ネパール地域の系統と東アジア地域の系統との雑種集団を用いることにより, 種内レベルでの分子地図作成が可能であることが示唆された.

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© 2002 日本育種学会
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