育種学研究
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原著論文
押倒し抵抗と地上部自重モーメントによるダイズ品種の耐倒伏性評価
島田 尚典河野 雄飛高田 吉丈境 哲文島田 信二
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2002 年 4 巻 4 号 p. 185-191

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抄録

1998, 1999年の2ヵ年にわたり, 耐倒伏性が異なる東北地方のダイズ5品種を供試して, ころび型倒伏に対する耐倒伏性の簡易評価法を検討した. 地上部自重モーメント=地上部生重×重心高, および, 押倒し抵抗モーメント=押倒し抵抗×押高さを7月中旬∼8月中旬にかけて調査した. 地上部自重モーメント/押倒し抵抗モーメント(以下, “押倒しモーメント比”)は, 耐倒伏性が強い品種の方が弱い品種より小さい値となり, 圃場栽培での倒伏程度と正の相関が認められた. 相関係数は調査時期が遅いほど高い傾向があったが, 8月下旬になると倒伏し始める個体が多くなる可能性が高いため, 調査適期は8月上∼中旬と判断した. また, 1999年に東北地方の在来種や刈和野試験地での育成系統21点について押倒しモーメント比を調査し, 大小各4位までの品種·系統を選んで, 2000年に倒伏しやすい水田転換畑で栽培した. その結果, 押倒しモーメント比が大きい群の倒伏程度が明らかに大きかった. 以上より, 押倒しモーメント比をダイズのころび型倒伏指数とし, この指数を調査することにより, 成熟期における倒伏の有無にかかわらず, 確実に耐倒伏性を評価することが可能である. ころび型倒伏指数を算出するためには, 地上部生重および重心高を調査するために地上部を切り取る必要があり, 調査個体から種子を得ることはできない. 立毛のまま調査可能で, 地上部自重モーメントに代用できる計量形質を検討した結果, 主茎長×主茎第一節間の太さ(長径)と地上部自重モーメントの間に高い正の相関が認められた. 従って, 調査した個体から次代の種子を採る必要がある場合には, 地上部自重モーメントの代わりに主茎長×主茎第一節間の太さ(長径)を用いて, ころび型倒伏指数を算出することが可能である.

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© 2002 日本育種学会
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