育種学研究
Online ISSN : 1348-1290
Print ISSN : 1344-7629
ISSN-L : 1344-7629
原著論文
単胚性テンサイにおける複胚珠性および二胚性の遺伝変異と選抜効果
大潟 直樹田中 征勝
著者情報
ジャーナル フリー

2002 年 4 巻 4 号 p. 201-208

詳細
抄録

テンサイ(Beta vulgaris L.)の単胚性一代雑種品種において単胚果実と混在する複胚珠および二胚果実は, 間引き作業が要求される劣悪な果実形質である. 本実験では, 単胚系統における複胚珠および二胚果実の遺伝様式を解明するために, 自殖系統内の複胚珠率および二胚率の頻度分布を調査するとともに両形質について高, 中および低方向の個体選抜実験を行った. また,これらの個体選抜系統を用いた系統間交配実験によるF2分離世代の複胚珠率の頻度分布を調査した. その結果, 母集団の複胚珠率は広く連続的な分布を示し, 選抜した後代は各選抜方向に固定された. また, 高および低方向選抜の世代平均値による複胚珠率の遺伝率は0.55であった. 系統間交配によるF2集団における複胚珠率の分離様式は, 中間親を中心とした連続的な分布を示し, F2集団間の複胚珠率の平均値ならびに分散は統計的に有意に異なった. これらのことから, テンサイ単胚系統における複胚珠果実の出現が量的遺伝子により支配され, 個体選抜により遺伝的に異なる複胚珠率を固定できることが判明した. 二胚率に関しては, 母集団の変異が複胚珠率より低く, 低方向へのみ個体選抜効果が認められ, その遺伝率は0.43であった. このため, 二胚果実の出現が量的遺伝子により支配されていることが示唆された.

著者関連情報
© 2002 日本育種学会
前の記事 次の記事
feedback
Top