遺伝子型を異にするゼラニウム(Pelargonium × hortorum Bailey)の野生種4種および各野生種と園芸品種との雑種8系統をビニ-ルハウスで栽培し,栽培適温期(5月)における高温処理や夏期の自然高温がゼラニウムの生育や開花に及ぼす影響を調査し,高温ストレス耐性系統の簡便な選抜方法を確立した.
栽培適温期における高温処理によって,全ての系統で葉緑素含量(SPAD値)が減少し,SPAD比I(高温処理区のSPAD値/無処理区のSPAD値)は5%水準で有意な系統間差が見られた.2回目の処理では,高温ストレス耐性に系統間差が大きく現れ,野生種1種および雑種4系統が強い耐性を示した.また,葉と花の高温ストレス耐性に正の相関(r = 0.806**)が,SPAD比Iと葉および花の高温ストレス耐性との間にも正の相関(r = 0.963***,r = 0.747**)が認められた.
夏期の高温によるSPAD値,小花数,花弁面積および花色の変化にも系統間差が見られた.開花時花器形質の評価をそれぞれ5段階のスコアで表し,高温ストレス耐性を評価した.その結果,雑種4系統は強い耐性が認められた.SPAD比II(8月のSPAD値/ 5月の無処理区のSPAD値)と開花時花器形質評価値との間には相関関係が認められなかった.一方,SPAD比IIと葉温との間には負の相関関係(r = −0.721**)が認められたが,開花時花器形質評価値と葉温との間には関連性が見られなかった.また,5月の花の高温ストレス耐性と開花時花器形質評価値との間にも相関関係(r = 0.630*)が認められた.
以上のことから,ゼラニウムにおいては,栽培適温期に高温処理しSPAD比による一次選抜を行った後,高温期に開花時花器形質評価から選抜する二次評価方法が効果的であり,本種の高温ストレス耐性系統の選抜に利用できると考えられる.