抄録
日本産ヒエ属5種を用い,ヒエ属で同定されているマイクロサテライトおよびInter simple sequence repeat(ISSR)領域の多型を調査した.日本産ヒエ属で多型を示す3つのマイクロサテライトマーカ(EC1,EC3およびEC5)を選抜し,検出された合計16アレルの塩基配列を決定した.これらのアレルの組み合わせによって供試170系統を14のタイプに分類した.ヒエにみられたタイプはイヌビエにみられた11タイプのうちの2タイプに限定され,4倍性であるタイヌビエは6倍性の他の種と明確に区別することができた.またISSR領域の多型の解析でもヒエ属5種143系統を14のタイプに分類できた.ここでもヒエでみられたタイプがイヌビエ9タイプの中の1タイプに限定された.これらの結果からヒエがイヌビエのタイプの限られた一部から栽培化されたと考えられる.