育種学研究
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ADP-グルコーストランスポーター遺伝子の新規アリルの同定と複数の機能性成分を高含有するオオムギ品種育成への利用
中田 克池田 達哉一ノ瀬 靖則野方 洋一関 昌子青木 秀之加藤 常夫小前 幸三長嶺 敬
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論文ID: 18J06

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抄録

オオムギは穀粒にβ-グルカンなどの機能性成分を多く含む特徴をもつが,その含量をさらに高めたオオムギ品種が求められている.本研究ではADP-グルコーストランスポーターをコードするLys5遺伝子の変異がβ-グルカンなど複数の機能性成分の含量を著しく向上させることを報告する.「四国裸97号」の変異集団から選抜された「谷系QM-1」と,「谷系QM-1」に農研機構中央農業研究センター北陸研究拠点で育成された系統を交配して得られた後代系統の一部では,穀粒の粒厚が薄く,表面にしわがあった.これらのしわ粒系統では総デンプン含量が著しく低下しており,大粒デンプンの形態異常が観察された.また,β-グルカンに加えてアラビノキシラン,フルクタン,レジスタントスターチ,γ-アミノ酪酸を著しく多く含んでいた.Lys5遺伝子の変異アリルをもちβ-グルカン含量が高い既存品種「ビューファイバー」においてもこれらの機能性成分含量の増加や,デンプン粒の形態異常が観察された.そこで「谷系QM-1」とそれを母本とする後代系統についてLys5遺伝子の塩基配列を解析したところ,しわ粒系統のみに共通する1カ所の非同義置換が見出されたことから,この変異が「谷系QM-1」において複数の機能性成分が増加した原因と考えられた.「谷系QM-1」の新規lys5アリルは様々な機能性成分を多く含むオオムギ品種の育成に有用であると考えられたため,アリル名をlys5.iとし,遺伝子型判別用のdCAPSマーカーを開発した.

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© 2018 日本育種学会
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