論文ID: 24J03
食用ギクは,新潟県や東北地方で広く栽培されている伝統野菜である.新潟県における主要系統は下越地方の‘かきのもと’および中越地方の‘おもいのほか’であるが,他にも知名度の低い系統が数多く存在する.しかし,それらの栽培状況はほとんど知られておらず,特性調査や保護も不十分である.本研究では,2か年に渡り新潟県北部の畑作地域を探索し,食用ギク系統の栽培状況を調査した.その結果,主に1960~1970年代に収集された新潟県園芸研究センター保存系統に含まれない13系統を収集した.そのうちの1系統は,近年に観賞用から食用へ転用された希少な事例であった.さらに,新潟県園芸研究センター保存系統のうち,7系統が現在でも栽培されていることを確認した.現地において,ほとんどの系統は栽培面積が小さく,また少数の高齢者によって維持されていた.そのため,いくつかの系統は近い将来に絶滅する可能性が示唆された.本研究で収集した系統を同一環境下で栽培し,形態および収量性を調査した.これらの特性に関する情報は,有望な系統を選抜し,地域資源として活用する際の基礎的知見として有用であると考えられる.