育種学研究
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2系統間のゲノムの違いを可視化するプログラム「ゲノム塗り絵」の開発と利用
吉田 英樹渡辺 脩斗坂 紀邦菅波 眞央松岡 信 小林 麻子
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論文ID: 25J01

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抄録

ゲノム情報は非常に大きく複雑であるため,多型情報そのままでは全容を理解することは困難である.そこで著者らは,2つのイネ系統のゲノムを「日本晴」をベースに比較し,多型をゲノム上に位置づけて図として可視化する手法「ゲノム塗り絵」を開発した.ゲノム塗り絵はPythonおよびRで作成したプログラムで,特定の2系統の多型情報を含むVCF(Variant Call Format)ファイルをもとに多型を可視化し,比較することを目的に作成したプログラムである.ゲノム領域は染色体を模した長方形に,多型を異なる色の線として表現する.ゲノム塗り絵を用いることで,同質遺伝子系統や準同質遺伝子系統における目的遺伝子の置換領域や遺伝背景の残存領域の確認をより正確に行うことができた.また,系譜間でゲノム塗り絵を比較することにより,特定の遺伝子や遺伝領域の系譜間での伝達のされ方を容易に理解することが可能であった.さらに,系統どうしのゲノム的関連性を解析することにより,系統どうしの新たな類似性や系譜上の関連性を見つけ出すこともできた.以上のことから,ゲノム情報を総体として可視化できるゲノム塗り絵は,全ゲノムデータをイネ育種家がより手軽に育種選抜や品種評価に利用するために,またイネ遺伝学者や分子生物学者がゲノム情報を理解するために役立ち,複雑なゲノムデータと育種などの実用的な応用との間のギャップを埋めるものである.

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