論文ID: 25J02
作物の交配育種においては,交配親品種のハプロタイプブロックの新たな組み合わせによって新品種が生み出されている.このハプロタイプブロックの組み合わせをハプロタイプとして可視化できれば,交配組み合わせを選定する上で重要な情報となり得る.本研究では,国内で開発された147のイネ近代育成品種・系統のゲノム塩基配列情報を利用して多種類のハプロタイプブロックのハプロタイプを定義し,系譜情報を基にハプロタイプブロックの祖先品種からの伝達を画像イメージとして確認できるハプロタイプ可視化ツールを作成した.一塩基多型(SNP)情報を基に,多収品種「あきだわら」のハプロタイプを定義し,147品種・系統との異同を明らかにすることができた.さらに,「あきだわら」の系譜上の品種・系統のハプロタイプの異同を基に,祖先品種からのハプロタイプブロックの伝達の流れを明らかにし,系譜上の日本型品種のハプロタイプブロックの違いを区別することができた.また,ハプロタイプブロックの比較によって,直近の親品種間で生じる染色体の組換え領域の推定が可能になった.本可視化手法は,育種母本の選定や交配計画において重要な情報を提供し,新たな品種・系統の開発にも貢献することが期待される.