抄録
ムギ類の作期にはほとんど雨の降らない夏雨型の半乾燥地域では, 土壌深部の水を有効利用するために現地の農民は種子を深播する. そのため, このような地域で栽培されるムギ類は深播しても出芽し得る深播耐性が要求される. 六条皮, 六条裸および二条皮性のオオムギ10品種 (実験1) および二条皮性9品種 (実験2) の正逆ダイアレルF2を育成して, 実験1では播種深度12および15cm, 実験2では深度9および12cmからの出芽率によって深播耐性の遺伝性を解析し, 子葉鞘長, 第1節間長および種子千粒重との関係を解析した. 深播耐性は相加・優性モデルに適合する遺伝性を示し, 広義の遺伝率は0.720-0.879 (実験1および2), 狭義の遺伝率は実験1では0.137 (深度12cm) と0.189 (深度15cm) ならびに実験2では0.648 (深度9cm) と0.769 (深度12cm) であった. 深播耐性は子葉鞘長との関連が強かった. 深播耐性と種子千粒重の間の相関係数は, 実験1において0.3程度と低かったが, 実験2では0.5および0.7であった. 実験1では深播耐性の強い方向が超優性を示して狭義の遺伝率が低かったが, 実験2では優性効果が小さく, 優性の方向はまちまちだった.