目的:極低出生体重児の母親が,周囲から支持を得られていると感じることは,子どもへの愛着および育児の自己効力感に影響があるかを明らかにする.
方法:6歳未満の極低出生体重児を養育する母親(以下,極低群)と正期産児の母親(以下,成熟群)に,母子保健事業等の利用経験・支援が得られる期待感(以下,被支持期待感)・母性愛着(以下,MAI)・育児の自己効力感(以下,PSE)をたずねる質問紙調査を行い,各群の被支持期待感の高低別の母性愛着・育児の自己効力感を比較した.
結果:成熟群では,MAI得点では3つの因子で,家族や仲間からの被支持期待感が高い群が低い群よりも高得点,PSE得点ではすべてのサポート源で被支持期待感が高い群が低い群よりもほぼすべての因子で高得点を示したが,極低群ではMAI得点で差がある因子は一部に限られ,PSE得点では有意差がみられなかった.出生体重と被支持期待感による4群でPSE得点を比較すると,サポート源により有意差がみられた因子が異なった.極低群で専門家からの被支持期待感の高い群は,全員が家庭訪問と健康相談の双方の利用経験があった.
考察:極低出生体重児の母親は,周囲に支持されていると感じていても母性愛着や育児の自己効力感に影響を与えにくい可能性がある.地域保健では訪問指導を含めた複数回の支援機会をもち,子どもの発達特性も母親の心理特性も踏まえた,個別性・専門性の高い包括的な継続相談をすることが重要である.