育種学研究
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イネの葯培養におけるカルス形成に最適の花粉発育時期の決定
木下 厚岡本 吉弘石村 櫻佐竹 徹夫
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2000 年 2 巻 2 号 p. 73-79

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抄録
花粉の発育ステージは葯培養の効率に大きく影響する. イネでは花粉1核期が培養の適期とされているが, 1核期の中のどの時期が最適であるかに関しては明らかでなかった. この論文では1核中期の花粉が培養に最適であることを確定した. 葯培養効率の高い水稲品種「キタアケ」と効率の低い品種「きらら397」を供試した. 穎花内の1葯を検鏡して花粉発育ステージを判定した後に, その穎花の残りの5葯を培養に用いた. 顕微鏡写真像によって1核期の花粉を前期, 中期, 後期の3期に区分した. 培養効率に対する花粉発育ステージの影響を明確に検出するため, 寒天培地に比べてカルス形成率の高い液体培地で培養し, それぞれの区で500葯以上を培養した. その結果, カルス形成率は花粉発育ステージに強く影響され, 両品種とも1核中期の花粉を含む葯から最も高率にカルスが誘導された. 培養開始時の花粉発育ステージがカルスの植物体再分化率や再分化した緑色植物の自然倍加率にまで影響するかどうかに関しては, 明確な結論が得られなかった. しかしカルス形成率が花粉発育ステージに影響される程度は, 植物体再分化カルス率がステージに影響される程度に比べて著しく大きく, その結果, 葯当たり緑色植物再分化率 (葯当たりカルス形成率×緑色植物再分化カルス率によって算出した値) も1核中期において最も高かった. 以上のことから, カルス形成に最適の花粉発育ステージは1核中期 (光学顕微鏡で花粉の内外の膜が二重に見え, 細胞質が充実していて核が細胞の中心に位置する時期) である.
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