育種学研究
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イネ種子根における酸性処理誘導遺伝子のcDNAマイクロアレイによる発現解析への主成分分析の適用
土門 英司岸本 直己菊池 尚志矢崎 潤史佐々木 卓治坂田 克己山本 公子斎藤 彰
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2000 年 2 巻 4 号 p. 189-195

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抄録
イネの種子根において酸性条件で発現の変動する遺伝子のプロファイリング (profiling) を目的として, 1,265個のイネcDNAから構成されるcDNAマイクロアレイを使用した発現解析を行った. pH3.5の酸性処理した種子根と酸性処理しないものから抽出した全RNAを逆転写反応により蛍光標識して, イネcDNAマイクロアレイとのハイブリダイゼーションに供試した. 得られたシグナル強度データをもとに遺伝子発現プロファイルの比較を行った. シグナル強度は103から107の広い範囲に分布していたため, 分布の特性に基づき対数変換を行い, 反復間の比較から異常値を除外した後, 解析に供試した. 統計手法として主成分分析 (Principal Component Analysis: PCA) を適用し, 各種の処理間で発現の変動する遺伝子の判別を検討した結果, 第1主成分として処理と無関係な個々の遺伝子に固有のシグナル強度の差異が, 第2主成分として処理に依存したシグナル強度の変動がそれぞれ抽出された. 第2主成分の主成分スコアの上位2.5%に相当する遺伝子, すなわち, 酸性処理を加えた後にシグナル強度の増大が検出される遺伝子の中には, 植物細胞内pHの調節に関与すると推定されている複数の遺伝子が確認できた. 以上の結果から, PCAはcDNAマイクロアレイを利用した遺伝子発現解析に適した手法であると考えられた.
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