育種学雑誌
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フィリピンのいもち病菌1菌糸に対する日本水稲の抵抗性の遺伝
清沢 茂久
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1969 年 19 巻 2 号 p. 61-73

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抄録
日本のいもち病菌菌系の大部分に対して罹病性の日本水稲の中に、フィリピンのある菌系に対して高度低抗性(免疫性)を示す品種が多数存在する。テストした品種の中、関東51号型、杜稲型および石狩白毛型品種のすべて、新2号型と愛知旭型品種の一部が、フィリピンの1菌系研Ph-03に対して免疫性を示す。これらの免疫性品種に研Ph-03を接種すると、しばしば罹病性病斑が生ずる。これは菌の突然変異によるものと考えられる。この突然変異体(研Ph-03-s+)を接種すると、上記免疫性品種群は、免疫性を示す品種群と免疫性を失なう品種群の2群に分けられる。前者の中には関東51号型と杜稲型が含まれ、後者の中には、石狩白毛型・愛知旭型・新2号型の品種が含まれる。前者をクサブエ型品種、後者を神力型品種と呼び、それらと罹病性品種との交配、あるいはそれら同志の交配により次の点を明らかにした。クサブエ型品種の免疫性は、Pi-k遺伝子による。神力型品種の免疫性は1優性遺伝子により支配され、その遺伝子はPi-k遺伝子と同一遺伝子座に存在する。両遺伝子は突然変異体、研Ph-03-s+に対する反応が異なる。そのため神力型遺伝子にPi-ksの記号を与えた。Pi-ks遺伝子は日本水稲の他に、アメリカや中国の品種中にも見いだされた。上記2遺伝子以外に研Ph-03に対する抵抗性を支配する2つ以上の遺伝子が見いだされた。
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