抄録
イネのindica品種のもついもち病抵抗性遺伝子を日本の品種にとり込む研究を行なった。わが国の代表的な7つのいもち病菌系に低抗性を示す8つのindica品種(第1表)に日本の品種をくりかえし戻し交雑して、これらの菌系に対して低抗性を示し形態的には日本の品種に似た系統を育成した。いもち病菌の病原性に関する突然変異菌系を用いて、これらの育成系統のいもち病抵抗性遺伝子の異同を調べた結果、第2表に示したように8つの組合せのうち5つの組合せから選抜した系統がいずれも「とりで1号」のもつPi-ztと同じ遺伝子をもっていることがわかった。突然変異菌系に対して低抗性に関して分離した他の3つの組合せの系統はPi-zt以外の遺伝子を持っていると考えられた。起原の異なるindica品種に同じ低抗性遺伝子が分布していたことは、今後indica品種から低抗性遺伝子を導入していく際にとくに留意すべき事実である。