抄録
水稲品種「チヨヒカリ」×「中生新千本」のF2派生F4、F5系統を用いて、F4世代で桿長、穂長、穂数、精籾重に関する切断型選抜を行ない、F5世代に期待される直接および間接的遺伝獲得量と、F5世代でのそれらの実現値との比較を行なった。各種遺伝統計量を用いた選抜による遺伝獲得量の推定が、水稲育種における効果的選抜法を作出するために役立ちうるものかどうかを検討した。桿長、穂長の遺伝力は、他の測定形質のそれらに比較して大きい値を示した。遺伝相関の大きい形質間では、選抜による相関反応量は比較的大きいことが認められた。選抜の直接効果は形質によって異なったが、その期待値は、1.28σから0.74σ、実現値は、1.25σから0.68σの範囲の値が得られた。選抜による他形質への相関反応量は、選抜による直接効果に較べて、概して小さかった。選抜による遺伝獲得量の期待値と実現値の間には、2、3の場合を除いて、かなり良い一致を示した。遺伝相関の低い形質間では、これら2種類の値の一致の程度は良くなかった。遺伝統計量を用いて推定した選抜による遺伝獲得量の期待値は、水稲の選抜手法を効果的なものに改良するために役立ちうるものと考えられた。