育種学雑誌
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ダイズ種子の最も等電点の低い 11S グロブリンサブユニットと関連形質の遺伝分析
原田 久也豊川 泰文喜多村 啓介
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1983 年 33 巻 1 号 p. 23-30

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抄録

ダイズ11Sグロブリンの最も等電点の低い酸性サブユニットであるA5サブユニットの遺伝様式を4つの組合せのF1,F2種子を使って解析した。各種子ごとに粗11Sグロブリン画分を調製して電気泳動的に分析をおこなった。同時にこれらの種子の一部を使ってA5サブユニットと塩基性サブユニット,11Sグロブリン組成,11S/7S比,種子タンパク質含量との遺伝的関連性を分析した。A5サブユニットの存在量は一対の対立遺伝子(Gl1,gl1)によって支配されていて,Gl1Gl1で最も多く,Gl1gl1ではGl1Gl1の約半量,gl1gl1では零であることがわかった。A5サブユニットと特定の2つの塩基性サブユニットの有無は常に平行していたので,これらのサブユニットの構造遺伝子はきわめて強く連鎖していてGl1を構成しているかまたはこれらのサブユニットの合成がGl1とgl1によって同時に調節されていることが示唆された・これらのサブユニットが存在すると等電点の最も低い11Sグロブリン分子種が存在し,サブユニットが欠失しているとこの分子種は存在しなかった。11S/7S比はGl1の遺伝子量と強く関係していて,Gl1Gl1・で最大・gl1gl1で最小となり,Gl1gl1ではこれらの中間であった。これらのことからGl1は11Sグロブリン分子種の多様性を増加させ,11S/7S比を高かめることがわかった。Gl1Gl1,Gl1gl1,gl1gl1の間で種子タンパク質含量に有意な差がなく,11S/7S比と種子タンパク質含量の相関も有意でなかった。従ってこれらの遺伝子は種子タンパク質含量に影響を及ぼさず,11S/7S比を増加してもタンパク質含量が減少しないものと考えられる。

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