育種学雑誌
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リョクトウ野生種(Vigna sublobata)の持つアズキゾウムシ抵抗性の遺伝様式及び栽培リョクトウ(V.radiata)への取り込み
喜多村 啓介石本 政男沢 恩
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1988 年 38 巻 4 号 p. 459-464

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抄録
アズキゾウムシ(Callosobruchus chinensis)はアズキ(V.angularis),リョクトウ(V.radiata),ササゲ(V.unguiculata)などの種子を食害する害虫として知られており,日本では貯蔵アズキの最大の害虫となっている.本虫は,リョクトウにごく近縁なケツルアズキ(V.mungo)やインゲン(Phaseolus vulgaris)の種子では育たないことが知られている.FujiiMiyazaki(1987)はヨリョクトウ野生種の一系統(TC1966)が本虫に対し完全抵抗性を有していることを見いだした・ TC1966は栽培リョクトウとの間に完全な交雑親和性を有している(宮崎1983).そこでリョクトウ2品種(大阪リョクトウ及びリョクトウNo・3)との交雑F1,F2及びF2個体別に採種したF3種子のアズキゾウムシ抵抗性を検定することにより,TC1966の有する本虫抵抗性の遺伝様式を調べた.また,本抵抗性のリョクトウ及びアズキヘの導入の可能性を考察した.本虫に対する抵抗性検定は以下のように行った.検定種子(40~100粒)をシャーレにいれ新しく羽化した成虫を雌,雄混合で30~40頭放ち産卵させた後,30℃の恒温器中に置いた.最低30日経過後,羽化穴のできた豆及び指先で軽く押して潰れた豆を感受性の豆,食害されなかった豆を抵抗性の豆とした。大阪リョクトウ(♀)×TC1966(♂)のF1種子5粒及びリョクトウNo.3(♀)×TC1966(♂)のF1種子4粒は全て抵抗性であった.両交配から得たF2種子は抵抗性と感受性に分離し,その分離比は抵抗性:感受性=3:1の期待分離比に良く適合した. 次に,F2個体別に採種したF3種子をF2個体当り最低40粒検定し,F2個体群の分離を調べた.その結果,F2個体群は,ほとんど全て抵抗性のF3種子を生産する抵抗性個体(遺伝子型R/Rと推定),全てあるいはほとんど全て感受性のF3種子を生産する感受性個体(r/rと推定),及び抵抗性と感受性がほぼ3:1に分離するF3種子を生産する中間性個体(R/rと推定)に分離した.その分離比は,抵抗性(R/R):感受性(r/r):中間性(R/r)=1:1:2の期待分離比にほぼ適合した. 以上,F1,F2及びF3種子検定結果から,TC1966の有するアズキゾウムシ抵抗性は単一の優性遺伝子(R)に支配されていると判断した.
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