抄録
コムギの品種間F1雑種(農林50号×フクホコムギ)からHoedeum bulbosum L. との属間交雑を利用して作出した30の半数体倍加系統を供試し,半矮性遺伝子Rht1およびRht2の収量に及ぼす効果を調べた.まず,これらの遺伝子の有無を幼苗のジベレリンに対する感受性により識別した.すなわち,半数体倍加系統および検定系統にそれらの両親を交雑して得たF2個体についてジベレリンに対する反応を調べた結果,1)農林50号およびフクホコムギの遺伝子型を,それぞれrht1・Rht2まおよびRht1・rht2と同定し,2)30の半数体倍加系統を,異なる4種類の遺伝子型rht1・rht2,Rht1・rht2,rht1・Rht2およびRht1・Rht2の,それぞれ7,10,6および7系統に分けることができた.さらに,これらの遺伝子型ごとに,つくば市において調査した稈長および子実収量を比較した結果,1)半矮性遺伝子Rht1およびRht2は稈長を相加的に減少させること,2)いずれか一方の遺伝子を有する半優性系統は長稈の系統と同じ子実収量を示したが,両方の遺伝子を有する矮性系統の子実収量は著しく低いことが明らかとなり,3)同じ遺伝子型の系統間においても稈長および子実収量に変異がみられたので,調査した半優性遺伝子以外の遺伝的要因もこれらの形質に作用していると推察された.