質的心理学研究
Online ISSN : 2435-7065
算数授業における図が媒介した知識構築過程の分析
「立ち戻り」過程に支えられた子どもたち同士の足場がけに注目して
河野 麻沙美
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2007 年 6 巻 1 号 p. 25-40

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抄録
本研究は,教室談話を通した課題解決学習を進める算数授業を対象に,児童の理解過程を検討したものである。教師が提供した学習を支援するための数学ツールではなく,教室談話を通して,子どもたちが作り上げた独自の絵図が互いの学習を支援し,理解深化を促した事例に即して,教室における知識構築の過程を分析した。絵図の生成過程における,教室談話と図の使用から捉えられた理解過程を検討し,数学ツール理解の様相と比較すると,図の表象が果たす役割に違いがみられた。学習を支援するはずの数学ツールは,子どもたちの理解を表象する図とはならず,絵図は,子どもたちの知識や思考スタイルの集大成となっており,さらに概念を可視化する数学的表象としての役割と,場面を表象する具体性を持ち合わせていた。Cobb らの数学理解を支援する活動の性質を捉えた「立ち戻り」概念にある共有・再共有の過程は,概念を可視化し,場面を表象するこどもたちの絵図がイメージとして機能し,また,くり返し立ち戻る過程で,子どもたちが様々な表現を用いて説明することで,子どもたちによる足場組みがなされ,子どもたちの理解深化が支えられていたことが分かった。
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© 2007 日本質的心理学会
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