育種学雑誌
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ダイズのパルミチン酸含量を支配する突然変異遺伝子間の関係
木下 剛仁/ 穴井 豊昭高木 胖Yutaka Takagi
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1998 年 48 巻 4 号 p. 377-381

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抄録

パルミチン酸はダイズ[Glycine max (L.) Merr.]の主要な飽和脂肪酸の一つで,ダイズ油の物性,化学的或いは栄養学的特性と密接に関係している。ダイズ種子のパルミチン酸含量は11%であり,これまで,パルミチン酸含量に関して減少或いは増加した突然変異体が得られている。最近の研究では,パルミチン酸含量が減少したC1726についてはfap1遺伝子,増加したC1727ではfap2遺伝子の支配が,また,パルミチン酸含量が減少したJ3ではsop1遺伝子の支配が明らかにされている。しかしながら,これら遺伝子間の関係については未だ解明されていない。この研究では,低パルミチン酸含量となるJ3のsop1遺伝子と,同じく低パルミチン酸含量となるC1726のfap1遺伝子および高パルミチン酸含量となるC1727のfap2遺伝子との関係を明らかにすることを目的とした。J3×Bay,C1726×Bay,J3×C1727,J3×C1726の各々について正逆交雑を行ったところ,何れの組み合わせてもパルミチン酸含量について母体効果は認められなかった。J3×BayおよびC1726×Bayの各組み合わせについてF2種子のパルミチン酸含量の分離は何れも1:2:1の分離比となった.J3×C1727のF2世代では1:14:1の分離比であり,J3×C1726のF2世代では3:1013の分離比となった。さらに,J3×C1727およびJ3×C1726の各F2世代の分離およびF3世代の分離から,J3のパルミチン酸含量はC1726或いはC1727とは独立な他の遺伝子座に属する遺伝子に支配されていることが明らかとされた。事実,J3×C1726の組み合わせから得られたsop1sopfap1fap1の遺伝子型は3.5%のパルミチン酸含量となり,より良好な物性,化学的或いは栄養学的特性となるダイズ油のための重要な遺伝資源であるものと考えられた。

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