抄録
要旨 本稿では、保育者養成課程在学生を対象として、土粘土の特性に対する体験的理解を意図した陶芸作品
製作を行った実践内容について報告する。
保育者養成課程における造形教育のカリキュラム研究においては、土粘土を用いた教育実践事例は比較的少
ないというのが現状である。本教育実践に取り組むにあたり、初めて陶芸作品製作を行う学生もいることを踏
まえ、成形技法に関しては、ろくろを用いるのではなく、タタラ巻き作りの技法を用いることにした。また、
勤務校の近隣地域である田川郡の上野焼を鑑賞資料として用いることにより、地域文化への理解促進も意図し
た教育内容とした。授業時におけるレポートの記述内容を通して考察を行った結果、学生は、製作工程を通して土粘土の硬さや色合いの変化の過程を経験したことにより、土粘土の特性に対する体験的理解を得ていたことが読み取れた。また、比較的容易に成形出来るタタラ巻き作りの技法を用いたことによって、左右対称の形や均等な厚みを表現することが出来ていたため、陶芸作品製作を通した達成感を味わうことが出来ていたと分かった。そして、
陶芸作品製作を経験したことにより、陶芸作家の技量の高さを実感し、上野焼に限らず個々の学生の出身地の陶芸作品に改めて目を向けるきっかけとなったと読み取ることが出来た。 これらのことから、保育者養成課程において陶芸作品製作を行うことは、造形材料としての土粘土の特性に対する体験的理解と、地域文化への関心を高めることに寄与すると分かった。