2024 年 15 巻 2 号 p. 147-152
破砕赤血球を伴う溶血性貧血の代表的な疾患に血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)があがるが,軽微ながらも破砕赤血球を認めた発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria:PNH)を診断し,TTPとの鑑別に苦慮した症例を経験したため報告する。症例は60歳台,女性で,倦怠感を認め受診した。COVID-19抗原が陽性で,破砕赤血球を伴う溶血性貧血,腎機能障害,血小板減少を認めた。血栓性微小血管症を呈しており,TTPが強く疑われた。全血漿交換療法によりLDHは減少するも血小板数の改善に乏しく,CD55/CD59の赤血球表面マーカーに加えPNHタイプ赤血球の定量検査を施行した。上記表面マーカーの欠損を認めたためPNHと診断した。PNHでは通常赤血球膜形態は正常であるが,時に破砕赤血球を伴うこともあり鑑別を要する。