2011 年 2 巻 2 号 p. 187-193
【はじめに】ヘパリングラフトAN69ST膜hemofilter(oXiris®)は,従来のAN69ST膜に表面処理剤のポリエチレンイミンの付着量を増加させ,さらにヘパリンをプレコーティングした新しいhemofilterである。抗血栓性に優れるのみならず,ヘパリンと特異的に結合するHMGB1(high mobility group box 1 protein)の除去効果も期待される。今回,oXiris®のHMGB1除去能をin vitroで検討した。【方法】豚血液を用い,LPSを持続投与し,inflammatory mediatorの産生を持続的に惹起した。そして本血液を用い,oXiris®(膜面積1.5m2)をhemofilterとして使用した持続的血液濾過透析(continuous hemodiafiltration:CHDF)を施行した。CHDFの施行条件は血液流量(Qb)=80mL/min,濾過流量(Qf)=300mL/h,透析液流量(Qd)=1,000mL/hとした。そして開始時,30分後,1,3,6,12,18,24時間後にhemofilterの流入側,流出側で血液を採取,また濾液の採取も行い,おのおののHMGB1濃度を測定した。併せて,HMGB1のクリアランス(CL)およびsieving coefficient(SC)を経時的に算出した。【結果】oXiris®のHMGB1CLは開始30分後30.0±9.9(mL/min),1時間後23.5±9.5,3時間後34.6±5.4,6時間後24.5±14.8,12時間後26.9±14.7,18時間後13.3±11.0,24時間後11.8±1.2であった。また,HMGB-1 SCは開始30分後0.003,1時間後0.003,3時間後0.006,6時間後0.003,12時間後0.002,18時間後0.001,24時間後0.002であった。【考察】oXiris®によるHMGB1の除去は膜表面にプレコーティングされたヘパリンへの結合および膜のバルク層での吸着により行われていると考えられる。本検討によりoXiris®にはHMGB1の持続的な除去能がある事が確認され,その除去は吸着原理主体であると考えられた。