2013 年 4 巻 1 号 p. 23-27
急性呼吸促迫症候群の治療に好中球エラスターゼ阻害薬のシベレスタットナトリウム(SSH)が投与されている。しかし,さまざまな合併症から急性腎不全を合併し,持続的腎機能代替療法(CRRT)を施行することが多く,薬剤の損失が懸念される。そこで,CRRTの模擬回路を用いてSSHの膜透過性を調べた。実験には,牛血および生理食塩水4.5LにSSH 20mgを投与し,CRRT模擬回路に模擬血液を2時間×3回循環させ,30分毎に返・脱血回路側と濾過回路側の3ヵ所からサンプリングし,HPLC法でSSH濃度を測定した。その結果,牛血系では,濾過回路側のSSH濃度は除水に関係なく低く,水系ではSSH濃度は除水とともに返血回路側と濾過回路側の濃度は上昇を認めた。蛋白質結合率の高いSSHは血液内では6時間のCRRTでも膜を透過せず,CRRT時の臨床上問題となるSSHの損失はないと考えられた。