日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
4 巻, 1 号
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総説
  • 岡野 一祥, 土谷 健, 秋葉 隆
    2013 年 4 巻 1 号 p. 3-8
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2022/09/16
    ジャーナル フリー

    東京女子医大病院本院では,年間約3万件の血液浄化治療が施行されている。当院の血液浄化療法における特徴は以下の3点にある。(1)大学病院でありながら,維持血液透析も積極的に行っている。(2)腎移植件数が多く,移植前後で血漿交換などの特殊治療が日常的に行われている。総件数のうち,約1.5%(約450件)は血液透析や血液濾過透析以外の特殊治療である。(3)病院の建物構造が複雑である一方,透析室外での血液浄化療法も日常的に行われている。約300件は透析室外(ICUまたは一般病室)で治療が行われている。このようななかで,各科の医師による情報交換・治療方針決定,医師とコメディカルとの連携を取りつつ,血液浄化療法を行っている。このように,血液浄化療法は対象となる疾患が多分野であり,比較的,重症な患者に施行する場合が多い。血液浄化療法が扱う疾患は多彩であり,さまざまな専門を持った医療者が共同で治療に当たる場合も多い。また,日常的に医師,看護師,臨床工学技士が治療を分担しており,さまざまなインシデント・アクシデントが発生する。これらの報告を再検討し,1つ1つを大切な教訓として,細かな改善を行っていくことでより安全な血液浄化療法が行われるよう改善していくことが大切と考える。

  • 抗凝固能管理および栄養管理
    中永 士師明
    2013 年 4 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2022/09/16
    ジャーナル フリー

    持続的腎機能代替療法(CRRT)施行症例の多くは敗血症や多臓器不全を合併しており,救命のためには栄養管理を含めた集学的治療が必要となる。また,CRRT施行中は抗凝固薬を使用することになるため,出血傾向を助長させることなく,また,過凝固にもならないような抗凝固能管理も必要となる。CRRT施行患者に対する栄養管理におけるエビデンスはほとんどなく,急性腎傷害(AKI)や敗血症に準じた栄養管理が推奨される。AKI患者では早期からの栄養管理が腎機能や予後の改善に繋がる。CRRTの利点は除水による輸液スペースの確保により,十分量の薬剤,栄養,血液製剤の投与が可能になる。欠点は薬剤やビタミンなどの栄養素が一部除去されてしまうため,投与量を調整する必要が生じることである。CRRT施行中の栄養管理としては,①underfeedingの許容,②早期から栄養管理を考慮し,カロリー摂取,蛋白摂取を正しく行う,③少量でも可能な限り経腸栄養を行う,の3点が重要となる。

  • 巽 博臣, 升田 好樹, 今泉 均, 千原 伸也, 澤田 理加, 中野 皓太, 山本 恭輔, 菅原 康介, 吉田 真一郎, 後藤 京子, 髙 ...
    2013 年 4 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2022/09/16
    ジャーナル フリー

    電解質異常の補正・治療を目的とした持続的血液濾過透析(CHDF)の透析液/補充液/置換液(以下,置換液)の調製について概説した。市販の置換液にはナトリウム(Na)140mEq/L,カリウム(K)2mEq/L,イオン化カルシウム(Ca)2.5mEq/Lが含有されている。高Na血症の場合,市販の置換液によるCHDFでは急激に補正されて脳浮腫を発症する危険があるため,血中Na濃度より低く正常値(140mEq/L)より高い,相対的低Na濃度の置換液を用いる。市販の置換液中にはイオン化Caが高濃度で含まれているため,高Ca血症をCHDFで治療する場合にはCaフリーの置換液を用いる必要がある。一方,高K血症で循環動態が不安定な場合,Kフリーの置換液を使用しCHDFで補正する。CHDFでは電解質など中分子量以下の有用物質も除去されるため,長期間または大量の置換液によるCHDF施行時には無機リンやマグネシウムなどの電解質のモニタリングも重要である。

原著
  • 萱島 道徳, 米田 龍生, 吉田 克法, 筏 義人
    2013 年 4 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2022/09/16
    ジャーナル フリー

    急性呼吸促迫症候群の治療に好中球エラスターゼ阻害薬のシベレスタットナトリウム(SSH)が投与されている。しかし,さまざまな合併症から急性腎不全を合併し,持続的腎機能代替療法(CRRT)を施行することが多く,薬剤の損失が懸念される。そこで,CRRTの模擬回路を用いてSSHの膜透過性を調べた。実験には,牛血および生理食塩水4.5LにSSH 20mgを投与し,CRRT模擬回路に模擬血液を2時間×3回循環させ,30分毎に返・脱血回路側と濾過回路側の3ヵ所からサンプリングし,HPLC法でSSH濃度を測定した。その結果,牛血系では,濾過回路側のSSH濃度は除水に関係なく低く,水系ではSSH濃度は除水とともに返血回路側と濾過回路側の濃度は上昇を認めた。蛋白質結合率の高いSSHは血液内では6時間のCRRTでも膜を透過せず,CRRT時の臨床上問題となるSSHの損失はないと考えられた。

  • 大石 義英, 高畑 智浩, 稲垣 伸洋, 秋月 登, 石井 孝典, 砂子澤 裕, 竹澤 真吾
    2013 年 4 巻 1 号 p. 28-33
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2022/09/16
    ジャーナル フリー

    【目的】敗血症治療においてサイトカイン吸着特性を持つ膜のヘモフィルタを使用した持続的血液濾過透析(CHDF)はサイトカイン除去の効果的な方法である。われわれはPMMA膜ヘモフィルタを2本直列接続したダブルPMMA-CHDF(SD-CHDF)を考案し,高サイトカイン血症に対する有用性を検討した。【対象】2010年6月〜2012年5月にアルメイダ病院ICUにてIL-6血中濃度が900pg/mL以上の高サイトカイン血症でSD-CHDFを施行した9症例を対象として検討した。同期間中に通常のPMMA-CHDF(S-CHDF)を施行した9症例を比較対照とした。【方法および結果】SD-CHDF群とS-CHDF群におけるCHDF開始前とCHDF開始6時間後,12時間後,24時間後のIL-6血中濃度を比較すると,SD-CHDF群では経時的に有意に低下し,S-CHDF群では24時間後のみ有意に低下した。また, 血中乳酸値はSD-CHDF群でのみ有意に低下した。【結論】サイトカインの吸着能を有する2本のPMMA膜ヘモフィルタを使用したSD-CHDFは高サイトカイン血症に対して,有用な治療法と思われた。しかし,敗血症患者の救命率に対する有用性を証明するにはさらなる検討が必要である。

  • 中断時間およびその要因
    山本 裕子, 土井 研人, 高橋 舞, 塚田 隆義, 渡邊 恭通, 根岸 康介, 花房 規男, 野入 英世, 玉井 久義
    2013 年 4 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2022/09/16
    ジャーナル フリー

    持続的腎機能代替療法(continuous renal replacement therapy:CRRT)は,24時間の治療継続を前提に,時間あたりの血液浄化量を設定するが,実際はさまざまな理由で中断される。本研究では,治療中断がどの程度生じているか,またその要因について検討を行った。方法は後ろ向き観察研究とし,診療録より中断時間・要因を抽出した。対象は2010年に当院でCRRT(回路交換1回以上)を施行した72例。CRRT開始から終了までの時間142.5±108.8時間,そのうち中断時間4.72±3.05時間であった(50±41分/日)。治療中断は計264回,中断要因は回路交換(83%)検査(7%)アクセス関連(3%)手術(1%)他(5%)で,中断時間は回路交換21.5±23.4分,それ以外は有意に長く247.3±265.7分であった。本研究では治療中断5%以下であったが,中断を考慮した実際の治療時間の測定は,CRRT条件を設定する上で有用な情報と考える。今後は治療中断時間が治療効果・予後に与える影響を検証する必要があろう。

  • 塚本 功, 土屋 陽平, 松田 真太郎, 秋元 照美, 村杉 浩, 山下 芳久, 鈴木 洋通
    2013 年 4 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2022/09/16
    ジャーナル フリー

    持続的腎機能代替療法(CRRT)施行中に血液濾過器(hemofilter)の過凝固をきたした際,hemofilterの膜素材を変更することの有効性について,電子カルテを元にretrospectiveに検討した。方法はポリスルホン(PS)膜hemofilterを用いて24時間未満で回路内凝固を引き起こした症例において,回路交換の際,膜素材を変更せずにPS膜を継続した症例をPS群(59session),セルローストリアセテート(CTA)膜に変更した症例をCTA群(33session)として比較検討を行った。まず,変更前のhemofilter life-time,メシル酸ナファモスタット(NM)時間投与量に差を認めなかったが,平均濾過流量はPS群531±243 mL/hrに対してCTA群391±234 mL/hrで有意に低値であった(p<0.05)。変更後のhemofilter life-timeはPS群18.6±14.5hrに比べてCTA群27.6±13.1hrで,24時間達成率もPS群25.0%に比べてCTA群61.1%で有意に高値であった(p<0.05)。以上よりCRRTにおいてhemofilterの過凝固をきたした際,PS膜をCTA膜に変更することはhemofilter life-timeの延長に効果的であった。

  • 嘉松 翔, 山香 修, 新山 修平, 森田 敏夫, 中村 篤雄, 鍋田 雅和, 福田 理史, 兵藤 啓一郎, 木嶋 涼二, 杉原 学, 高須 ...
    2013 年 4 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2022/09/16
    ジャーナル フリー

    集中治療領域において持続的腎機能代替療法(Continuous Renal Replacement Therapy:CRRT)は欠かせないものとなっており,CRRTで使用するヘモフィルタは長時間にわたり使用可能であることが求められる。今回,エクセルフロー®(AEF)についてAEF0.7(膜面積0.7m2)とAEF1.0(膜面積1.0m2)でクロスオーバー比較試験にてライフタイムを検討した。さらに,実験系でヘモフィルタ内部の流れをX線透視下に観察した。ライフタイムは,AEF0.7で1,908±210分,AEF1.0で1,305±213分とAEF0.7の方が有意に長かった。また,実験系の結果では,膜面積が大きいほどヘモフィルタ内部の血流分布が不均一であることが示唆された。AEFでは,膜面積が大きくなるほどL/Dが小さく,ヘッダー直径は大きくなる設計となっている。今回,膜面積が大きいAEFでライフタイムが短縮した原因は,ヘッダーの直径が大きくなったことによる線速度の減少と,血流分布が不均一となったことによる影響があったと考えられた。よってヘモフィルタのライフタイムを延長するには,L/Dが適正であることが重要である。

  • 細孔モデルおよび物質移動モデルを用いたシミュレーション評価
    海老根 智代, 小久保 謙一, 栗原 佳孝, 丸山 直子, 塚尾 浩, 小林 弘祐
    2013 年 4 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2022/09/16
    ジャーナル フリー

    急性血液浄化療法は救急・集中治療領域において広く行われる治療となったが,治療の操作条件やヘモフィルタの仕様がクリアランスに及ぼす影響についての検討は少ない。そこで本研究では透析液流量と濾過流量の総量(QD+QF),透析液流量と濾過流量の比(QD/QF比),中空糸膜の細孔半径がクリアランスに及ぼす影響を検討するため,拡散と濾過による物質移動を考慮したモデルによるシミュレーションを行った。その結果,QD+QFや細孔半径を大きくするとクリアランスは増加した。QD/QF比を変化させると小分子量物質はCHDF領域で最小クリアランス,中・大分子量物質はCHDF領域で最大クリアランスを持ち,その際,クリアランスが最小もしくは最大になるQD/QF比は物質ごとに異なった。

第23回日本急性血液浄化学会学術集会Best Presentation Award(BPA)受賞論文
原著
  • 芝田 正道, 小川 哲也, 桧垣 洋平, 森谷 紘旭, 樋口 千恵子, 中野 清冶, 大塚 邦明
    2013 年 4 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2022/09/16
    ジャーナル フリー

    今回,Extracorporeal Ultrafiltration Method(ECUM)を実施中,透析器接続カプララインに血液が漏れる事故を経験した。治療開始後65分経過も漏血警報は鳴らなかった。本件を検証し迅速に漏血がモニタリングできる条件を模索する目的で,人工的にダイアライザの入口,中間,出口部に漏血箇所を作製しヒト血液による実験を行った。結果,漏血した血液は除水に伴う移動以外に重力による沈降速度の影響を受け,漏血箇所や透析器接続カプラ,血液流路方向などの条件により漏血警報反応時間が大幅に遅延した。ECUM実施時,迅速に漏血センサを機能させるには透析器接続カプラが血液透析と同じ対向流接続なら血液流路方向は下→上向き,透析器接続カプラが並行流接続なら血液流路方向は上→下向きとする必要があるが,さらなる安全性を考慮した場合今後は自己診断機能として透析装置に組込み,事前発見が望まれる。

原著
  • 土屋 陽平, 塚本 功, 村杉 浩, 渡辺 裕輔, 末吉 慶多, 鈴木 洋通
    2013 年 4 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2022/09/16
    ジャーナル フリー

    冠動脈バイパス術(CABG)は人工心肺装置を用いない方法(off-pump)により低侵襲化が進んでいる。人工心肺装置を用いた心臓血管手術後の急性腎傷害(AKI)発症および持続的腎機能代替療法(CRRT)導入予測因子に関する報告は多いが,off-pump CABG(OPCABG)に関するものはまだ少ない。そこで,当施設においてOPCABGを施行した非維持透析患者237症例(うち術後CRRTを導入したのは33症例)を対象に,術後のCRRT導入予測因子を検討した。方法はCRRT導入の有無を従属変数,術前・術中・術後の要因を独立変数とし,p<0.05で有意差のあった因子を選択し多重ロジスティック回帰分析により解析した。その結果,術前推算糸球体濾過量:60mL/min/1.73m2未満,術前血清アルブミン値:3.5g/dL未満,術前ヘモグロビン濃度:12g/dL未満,術中尿量:600mL未満,大動脈内バルーンパンピング使用,術後PaO2/FiO2比:300以下が有意であった。結論として,術前推算糸球体濾過量,血清アルブミン値,ヘモグロビン濃度,術中尿量,大動脈内バルーンパンピング使用,術後PaO2/FiO2比を併せることによって術後CRRTの導入を予測しうる可能性が示唆された。

  • 髙橋 良光, 中村 藤夫, 追手 巍
    2013 年 4 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2022/09/16
    ジャーナル フリー

    血液透析療法の設定血液流量(prescribed blood flow rate,Qb,mL/min)は,溶質の除去量に大きな影響をもたらす。実血液流量(actual blood flow rate,aQb,mL/min)は,透析針によって異なり,Qbより低いことが報告されている。double lumen catheter(DLC)を用い,QbとaQbの差を比較した。脱血側におけるaQbの違いについて,Flexxicon®Ⅱは,80.4±0.01mL/minと最も低下を示した。Gam Cath®は,23.8±0.55mL/minと最も軽微な低下を示した。返血側は,すべての条件で6.58±2.29mL/min以内の低下を示した。aQbの違いは脱血側の形状や内腔断面積の違いによる影響が大きく,とくに高流量の設定を行うときは各種DLCの特徴を考慮してQbを決定する必要があると考えられる。

  • 問題点と対策
    山田 幸恵, 上村 真弓, 竹内 陵, 鈴木 むつみ, 木下 由華, 橋詰 英明, 〆田 実, 杉森 美幸, 石川 正敏, 秋山 玲奈, 三 ...
    2013 年 4 巻 1 号 p. 75-80
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2022/09/16
    ジャーナル フリー

    当院ICUで小児持続的血液浄化療法(小児CBP)の施行が開始された当初は,トラブル発生時に対応が遅れることがあった。そこで,当院ICUで施行した小児CBPを後ろ向きに検討し,管理の問題点と対策についてまとめた。3年間で7症例に対して,のべ104日施行された。体重20kg未満の症例は,赤血球濃厚液と新鮮凍結血漿で回路を充填し,治療開始前にHDFを施行して,電解質などの補正と加温を行った。定期回路交換は,血液製剤を使用せずに,使用中回路と新規回路の直列接続で簡潔に行った。施行中のトラブルは74件で,回路内凝固が34件で最多だった。マニュアルを作成して手技を統一したことや,勉強会や情報交換を行ったことで,円滑な対応が可能になり,臨床工学技士の不安も軽減した。回路内凝固は安定した治療の提供を妨げるため,今後も発生への早期対応を試みる必要がある。

  • 鈴木 紘子, 阿部 雅紀, 丸山 範晃, 及川 治, 高島 弘至, 馬場 晴志郎, 伊藤 緑, 藤井 由季, 谷口 真知子, 逸見 聖一朗, ...
    2013 年 4 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2022/09/16
    ジャーナル フリー

    急性血液浄化法の導入基準は明確に定められていない。急性血液浄化法施行時の予後予測因子を検討するため,2011年1月から12月の間に当施設で急性血液浄化法を必要とされた重症患者61名を対象として,その対象疾患と重症度および生命予後へ及ぼす因子を調査し,後ろ向き研究を行った。重症度はAPACHEⅡscore,不全臓器数,敗血症の有無,不全臓器の種類を用いて評価し,急性腎障害(acute kidney injury:AKI)については,RIFLE分類を用いて評価した。対象症例を急性血液浄化法導入後90日以上生存した生存群と,90日未満で死亡した死亡群の2群に分け比較検討したところ,死亡群において多臓器不全(multiple organ failure:MOF)罹患率,不全臓器数が有意に多かった。また,AKI患者のみを対象とした解析では,腎機能代替療法(renal replacement therapy:RRT)開始時に持続的腎機能代替療法(continuous renal replacement therapy:CRRT)を選択した群は間歇的腎機能代替療法(intermittent renal replacement therapy:IRRT)を選択した群と比較して生存率が有意に低かった。予測因子の多変量解析では,APACHEⅡscoreが有意な独立した因子として選択された。これらの結果から,急性血液浄化法を必要とされる患者の生命予後へ及ぼす因子として,APACHEⅡscoreが有意な予測因子であると考えられた。

  • polymyxin B-immobilized fiber column hemoperfusion(PMX-DHP)の治療効果についての検討
    西浦 亮介, 中津留 邦展, 岩切 弘直, 隅 專浩, 名越 秀樹, 宮川 貴幸, 平田 哲也, 小路 久敬
    2013 年 4 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2022/09/16
    ジャーナル フリー

    【目的】薬剤抵抗性を示す難治性急性間質性肺炎急性増悪症例に対してエンドトキシン吸着療法を施行し,その効果と臨床的パラメータの推移を評価する。【方法】当院で間質性肺炎と診断しステロイドパルス療法施行後に呼吸不全の改善を得られなかった症例に対し,PMX-DHP施行群(PMX群,n=11)とPMX-DHP未施行群(nonPMX群,n=13)とを統計学的に比較検討した。【結果】PMX群では酸素化の有意な改善を示した(PMX前vs. PMX12時間後,P/F比:120.6±43.5 vs 183.6±87.1,p=0.044)。PMX群ではnonPMX群と比較して有意に4週後の予後改善を示した(Kaplan-Meier法,logrank test,p=0.037)。【結論】PMX-DHPは薬剤抵抗性を示す間質性肺炎の急性増悪症例における重篤な急性呼吸不全の改善しうることを期待できる。

症例報告
  • 髙橋 科那子, 升田 好樹, 今泉 均, 巽 博臣, 後藤 京子, 喜屋武 玲子, 君島 知彦, 吉田 真一郎, 千原 伸也, 澤田 理加, ...
    2013 年 4 巻 1 号 p. 93-96
    発行日: 2013/06/01
    公開日: 2022/09/16
    ジャーナル フリー

    敗血症の治療中に生じた血小板輸血不応に対し,血漿交換療法を行い奏効した症例を経験した。症例は43歳,女性。急性骨髄性白血病に対する化学療法後に汎血球減少が生じ,治療開始30日後に敗血症となり当院ICUに入室した。第3 ICU病日に何ら誘因なく肝逸脱酵素とビリルビン値の急激な上昇とPT-INRの著明な延長を生じ,急性肝不全となった。ただちに血漿交換療法を3日間施行し,肝機能障害は急速に回復した。ICU入室後に血小板輸血不応状態となり,第10 ICU病日には血小板減少に伴う肺胞出血を生じた。抗血小板抗体が陽性であったため,血小板輸血の効果回復のため同種抗体除去を目的に血漿交換療法を3回施行した。血小板輸血による血小板数増加は回復し,肺胞出血も改善した。病因物質除去を目的とした血漿交換療法は,自己あるいは同種抗体といった分子量の大きな物質が関連する病態での治療法の一つとして有用である可能性が示唆された。

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