2013 年 4 巻 2 号 p. 168-171
メシル酸ナファモスタット(NM)過敏症の症状は軽微なものから重篤なものまで多彩である。軽微な場合NM過敏症を念頭にNMの中止も考慮されるも,出血傾向の増悪などを危惧し,注意深い経過観察とともにNMが継続使用されることがある。ベッドサイドでのNM過敏症の診断は困難であるが,今回光学式非観血的連続へマトクリットモニター(CLM)による循環血液量の変化率(ΔBV)が奇異な変動を示し,NM過敏症の診断に有効であった症例を経験した。症例は73歳男性。7年の透析歴。導入時にNMの使用歴あり。血性胸水のため抗凝固薬をNMに変更。その際開始60分後頃より悪寒・戦慄の出現とともにΔBVの急激な変化を認めた。抗凝固薬をヘパリンに変更したところ,症状やΔBVの急激な変化を認めなかった。後日NM特異的IgE抗体陽性と診断された。CLMによるΔBVの変動の評価は,NM過敏症における簡便かつ瞬時な検査方法として有効である可能性が示唆された。