日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
4 巻, 2 号
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総説
  • 安田 日出夫, 加藤 明彦, 藤垣 嘉秀
    2013 年 4 巻 2 号 p. 103-106
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    予後不良な腎機能代替療法(renal replacement therapy:RRT)を要する急性腎傷害(acute kidney injury: AKI)に対して早期発見および予後推測,さらには治療介入の指標となるバイオマーカーの開発が進んでいる。一方で,RRTを離脱しても30~40%の症例で再導入を要すること,RRT再導入は予後不良因子であることから,RRTからの適切な離脱は予後改善に繋がる可能性がある。このことから再導入に至らないRRT離脱の指標となるバイオマーカーが求められる。近年,RRT離脱症例で尿中neutrophil gelatinase-associated lipocalin(NGAL),hepatocyte growth factor(HGF)が経時的に低下することが報告された。今後,臨床的指標とバイオマーカーの組み合わせが,RRTからの適切な離脱および予後改善に寄与することが期待される。

  • 湯沢 由紀夫, 長谷川 みどり, 林 宏樹
    2013 年 4 巻 2 号 p. 107-114
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    急性腎傷害(AKI)の発生頻度は年々増加しており,とくにICU領域で発症したAKIの生命予後は不良である。血液浄化療法の導入が必ずしもAKIの予後改善に寄与するとは限らない1)。これは腎臓で生じた傷害が腎局所にとどまらず,心臓・肺・脳・消化管・肝臓といった腎臓以外のさまざまな遠隔主要臓器に連続して,かつ同時に傷害が発生し,多臓器不全に進行する危険が高いことが,AKIの生命予後不良の原因の1つと考えられている2)。このため,AKIの治療にあたっては,腎保護・腎機能代替療法の適応を考慮するだけでなく,主要臓器障害の発症の可能性を常にモニタリングする必要がある。AKIによる遠隔臓器障害発症の共通機序として,炎症性メディエーターの関与が重要である。腎臓で虚血障害をはじめとするさまざまな障害の結果誘導された炎症性メディエーターは,腎局所の障害に関与するばかりでなく,全身の自然免疫を活性化し,Toll様受容体の活性化,活性酸素,補体活性化に引き続き,各臓器に特有のケモカイン発現亢進,好中球・マクロファージの活性化が引き起こされ,最終的に各遠隔臓器の生理的機能の異常をきたす。AKIにより複数の腎臓以外の遠隔臓器の障害が引き起こされる状況では,全身性炎症反応症候群(SIRS:systemic inflammatory response syndrome)に代表される複数の炎症性メディエーターが誘導されており,単一のメディエーターを標的とした治療では十分な治療効果が期待できない。このため,AKIにより多臓器不全に移行する危険のある症例に対しては,炎症性メディエーターを除去する目的で,血液浄化療法の適応以前のより早期の段階から(non renal indication)の血液浄化療法の導入が重要と考えられる。

  • 現状と問題点
    土井 研人, 矢作 直樹, 野入 英世
    2013 年 4 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    Continuous renal replacement therapy(CRRT)はICUにて発症したacute kidney injury(AKI)症例に対する有効な治療ツールであることは言を待たない。CRRTの治療条件設定および開始基準については,これまで数多くの臨床研究が行われて一定の見解が得られているが,いまだ不確定な要素が多いことも事実である。本論文においては,1)間欠的血液浄化と比較しての優位性,2)早期治療開始の是非,3)CRRTにおける至適血液浄化量の設定と実際の治療量評価,4)血液浄化フィルターの選択,について行われた臨床研究の結果を概説するとともに,いまだ議論の余地があり今後明らかにすべき問題点を提示した。個々の症例において最適な治療開始時期,条件設定が異なることは不可避であるが,それぞれの選択において理論的な根拠に基づいた判断が求められるとともに,その根拠となる臨床研究による知見の蓄積が必要である。

  • 阿部 雅紀, 岡田 一義, 相馬 正義
    2013 年 4 巻 2 号 p. 120-127
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    急性腎障害(acute kidney injury:AKI)に対する腎機能代替療法(renal replacement therapy:RRT)は24時間持続的に施行する持続的腎機能代替療法(continuous renal replacement therapy:CRRT)と1回3~4時間程度で週3~4回施行する間歇的腎機能代替療法(intermittent renal replacement therapy:IRRT)に大別される。しかし,近年CRRTとIRRTの中間的な治療モードとしてsustained low-efficiency dialysis(SLED)という方法があり,わが国でも注目されている。SLEDは間歇的血液透析(intermittent hemodialysis:IHD)の変法で,血液流量と透析液流量を減じ,治療時間を6~12時間に延長して行う方法である。CRRT装置がない場合,あるいはCRRTを施行できない場所でもSLEDはCRRTと同等の効果を得られる治療手段となる。治療時間,血液浄化装置の観点から分類すると,SLEDはIRRTの1つとして分類されるが,溶質除去,体液除去,循環動態に関してはIRRTとCRRTの中間的存在として位置づけられる。今後,急性血液浄化法の1つの選択肢として,わが国においてもSLEDの定義と位置付けについて考えていく必要性があると思われる。

原著
  • 峰松 佑輔, 倭 成史, 藤井 順也, 宮川 幸恵, 湊 拓巳, 岡田 俊樹, 伊藤 孝仁
    2013 年 4 巻 2 号 p. 128-132
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    敗血症やDICなどの病態において,炎症反応を促進・増幅させる物質としてhigh mobility group box 1(HMGB1)が深く関与していることが知られている。現在,敗血症性ショックにおいては,ポリミキシンB固定化カラムによる直接血液灌流法(PMX-DHP)によるエンドトキシン吸着が行われ有効な治療効果が報告されている。本療法施行によるHMGB1制御に関しては,ポリミキシンB固定化カラム(PMXカラム)による直接的なHMGB1の吸着を示唆する報告や吸着しないとする報告などさまざまである。そこで,われわれは,本療法におけるHMGB1の経時的変化とPMXカラム前後の濃度変化について検討を行った。その結果,HMGB1濃度に経時間変化は認められず,カラム前後のHMGB1濃度にも変化は認められなかった。さらにin vitro実験でもカラム依存的な経時的変化は認められなかった。以上より,PMX-DHPに直接的なHMGB1除去作用を期待することは不適当と考える。

  • 塚本 真貴, 土井 研人, 片桐 大輔, 濱崎 敬文, 松原 全宏, 石井 健, 矢作 直樹, 南学 正臣, 野入 英世
    2013 年 4 巻 2 号 p. 133-137
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    急性腎障害(AKI)に対する早期診断を目指した新規尿中バイオマーカーが開発されているが,その経時的変化を詳細に検討した報告は少ない。AKIの予後予測,急性血液浄化療法の施行予測において,尿中L型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)の経時的測定の有用性を検討すべく,混合型ICUに入室した成人274症例に対してICU入室時と24時間後に採尿し尿L-FABPを測定した。AKI増悪予測において入室時,24時間後,その平均,最小,最大,差,変化率の各パラメーターの予測精度をROC解析により評価した。その結果,ICU入室後24時間の経過で尿L-FABPの最小値が高い症例,すなわちICU入室後24時間の経過で尿L-FABPが十分に低下しない症例はAKI増悪をきたしやすく,さらに急性血液浄化を必要とする可能性が高いことが示された。

  • 脱血圧変化における3機種の流量誤差率の比較
    山香 修, 嘉松 翔, 上原 舞美, 平嶋 晃大, 真茅 孝志, 木嶋 涼二, 杉原 学, 福田 理史, 中村 篤雄, 新山 修平, 高須 ...
    2013 年 4 巻 2 号 p. 138-142
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    近年,脱血状態を脱血圧で監視している血液浄化装置が増加している。しかし,旭化成メディカル社製の血液浄化装置ACH-Σ®(以下Σ),プラソートiQ21®(以下iQ),プラソートLC®(以下LC)の各装置において,脱血圧の違いによる実流量の影響についての報告は無い。そこで,これらの装置について,脱血圧変化が実流量に与える影響を検討した。【方法】血液ポンプ設定流量を50,80,150,200mL/min,脱血圧を-70,-100,-150,-250mmHgに設定した。1分間に吐出される模擬血液の重量を各3回電子天秤で計測した。模擬血液重量から実流量を算出し,流量誤差率を{(実流量-血液ポンプ設定流量)/血液ポンプ設定流量}×100から求めた。【結果】流量誤差率(y)と脱血圧(x)は回帰式から,Σ:y=0.0249x-3.694,iQ:y=0.0384x+4.544,LC:y=0.0417x+0.666の関係を得た。【結論】Σの回帰式の傾きは他と比べ緩やかであり,脱血圧の影響を受けにくいといえる。装置や回路の違いで脱血圧が実流量に与える影響が異なり,各装置の特性を把握し使用することが重要と考えた。

  • 舘 智子, 岡田 忠久, 末田 伸一
    2013 年 4 巻 2 号 p. 143-147
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    持続的血液濾過透析(CHDF)において透析効率は理論上透析液量と濾過量の総量にて規定されると考えられており,膜面積の違いによる影響および膜面積と膜耐久性の関係も定かではない。また,CHDFを施行する状況では,体液変動の観点から充填量を押さえるべき状況も多々ある。そこで保険診療内で使用可能な透析液流量である場合,小分子透析効率が膜面積,血液流量によらず透析液流量から規定されることを水系実験から確認した。そして,実臨床で使用したAEFシリーズ(AEF03:37本,AEF07:31本)において使用可能時間を指標とした膜耐久性と回路内圧を比較検討した。低膜面積の濾過器は膜面積が大きい濾過器と比較して,膜耐久性,小分子透析効率,除水性能において同等である可能性が示され,低充填量のため開始時の体液変動,返血不可能な際の失血量,異物接触などを低減させ得ることからより低侵襲な治療の可能性が示された。

  • 事例報告と再発防止策
    塚本 達雄, 松村 由美, 上本 伸二, 一山 智, 柳田 素子
    2013 年 4 巻 2 号 p. 148-153
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    京都大学医学部附属病院において,2011年11月血液浄化機器取り違えに起因する死亡事故が発生した。本稿では,事故の概略に関して記載するとともに,現在進行している再発防止策に関して述べる。症例は50歳代の非代償性肝硬変合併慢性維持血液透析患者で,脳死肝移植待機中にドナーが発生したため緊急入院となった。脳死部分肝移植術後に持続的血液濾過透析(CHDF)を開始し継続していた。術後7日目にCHDF回路交換を行う際に血液濾過器と血漿分離器を取り違えたため,患者は急変し回路交換13時間後に死亡した。事故後検証により,①取り違えやすい物品管理,②CHDF体制の不備,および,③患者が死亡するまでに急変時の原因究明ができなかったという夜間,休日時の診療体制の問題などに集約され,臨床工学技士による24時間体制のCHDF回路組み立ておよび院内共通の手順書の作成と血液浄化療法に関するスタッフ教育などが強化・実行されることとなった。

  • 土屋 陽平, 塚本 功, 村杉 浩, 高根 裕史, 渡辺 裕輔, 鈴木 洋通
    2013 年 4 巻 2 号 p. 154-159
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    急性腎傷害(AKI)は心臓血管外科手術後にしばしば発生する重篤な合併症である。そのAKIの治療法のひとつとして持続的腎機能代替療法(CRRT)が用いられるが,離脱もしくは間歇的透析への移行時期について検討した報告は少ない。心臓血管外科手術後に発症したAKIでかつ人工呼吸管理が行われた症例について,人工呼吸器装着の有無とCRRT再導入率を電子カルテで後方視的に検討した。対象をCRRT離脱時点で人工呼吸器が装着されていた装着群(32例)とすでに外れていた非装着群(41例)に分けた。その結果,装着群は離脱時の体重変化率が多く,sequential organ failure assessment(SOFA)score,中心静脈圧は有意に高かった(p<0.05)。さらに,CRRT再導入率も装着群で有意に高率(p<0.01),再導入への調整オッズ比は5.20(95%CI:1.15~23.4)であった。心臓血管外科手術後のAKIにおいて,CRRTを離脱する際には,腎機能だけでなく,人工呼吸器装着の有無も考慮に入れる必要があると考えられた。

症例報告
  • 菅野 義彦, 林田 敬, 城下 晃子, 香野 日高, 本間 康一郎, 鈴木 昌, 吉田 理, 堀 進悟, 林 松彦
    2013 年 4 巻 2 号 p. 160-163
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    低体温症の2例に対して積極的体内加温としての血液透析(HD)により早期の復温をし得たので報告する。【症例1】60歳代男性。職場屋内で倒れているのを発見され,当院に搬送された。搬入時意識JCS Ⅰ-3-RI。腋下体温は測定不能。その後膀胱温が28.4℃と判明,血清クレアチニン値(Scr)19.72mg/dLのためHDを施行した。透析液温34.6℃より開始し,39.0℃まで上昇したところ3時間透析後は体温34.2℃まで上昇した。【症例2】60歳代男性。公園で長時間横たわっていたため,当院に搬送された。搬入時意識JCS Ⅲ-100。直腸温27.5℃。Scr 5.45mg/dL,血清カリウム値6.5mEq/LのためHDを施行した。透析液温37.5℃よりHDを開始し,39.0℃まで上昇したところ2時間HD後は体温33.3℃まで上昇した。体外循環を用いた復温法は症例の状態に応じて適切に選択されるべきと考えられた。

  • 徳留 実香, 植田 浩司, 井上 和久, 吉田 哲也, 石井 利英, 吉川 真由美, 坂地 一朗, 木下 啓太, 村上 徹, 上浦 望, 吉 ...
    2013 年 4 巻 2 号 p. 164-167
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    白血球除去はカラムを用いた治療法が主流だが処理量に限界がある。今回われわれは遠心法を用いた白血球除去療法を施行した症例を経験した。[症例]39歳男性。動悸,息切れを主訴に白血病疑いにて当院へ緊急搬送となる。意識清明,血圧128/64mmHg,体温37.5℃,呼吸回数20回/min,SpO2 93%(酸素2L)。採血検査上,WBC 438,500/μL,RBC 1,520,000/μL,Hb 4.3g/dL,Ht 12.7%,Plt 16,000/μL,PT-INR 1.34であった。[方法]ブラッドアクセスには両上肢静脈を選択し,遠心分離器COBE® Spectra(TERUMO BCT)を使用し,抗凝固薬としてACD-A液を用いて施行した。[結果]施行後に白血球数は177,100/μLにまで減少した。[結語]遠心法による白血球除去療法においても安全かつ有効な治療効果を得ることができると考えられた。

  • 加茂 歩美, 阿部 貴弥, 孫野 茂樹, 横山 朋大, 深川 雅史
    2013 年 4 巻 2 号 p. 168-171
    発行日: 2013/12/01
    公開日: 2022/08/24
    ジャーナル フリー

    メシル酸ナファモスタット(NM)過敏症の症状は軽微なものから重篤なものまで多彩である。軽微な場合NM過敏症を念頭にNMの中止も考慮されるも,出血傾向の増悪などを危惧し,注意深い経過観察とともにNMが継続使用されることがある。ベッドサイドでのNM過敏症の診断は困難であるが,今回光学式非観血的連続へマトクリットモニター(CLM)による循環血液量の変化率(ΔBV)が奇異な変動を示し,NM過敏症の診断に有効であった症例を経験した。症例は73歳男性。7年の透析歴。導入時にNMの使用歴あり。血性胸水のため抗凝固薬をNMに変更。その際開始60分後頃より悪寒・戦慄の出現とともにΔBVの急激な変化を認めた。抗凝固薬をヘパリンに変更したところ,症状やΔBVの急激な変化を認めなかった。後日NM特異的IgE抗体陽性と診断された。CLMによるΔBVの変動の評価は,NM過敏症における簡便かつ瞬時な検査方法として有効である可能性が示唆された。

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