日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
症例報告
急性腎障害に対して超低効率血液濾過透析(Super Low Efficiency Dialysis with filtration:SPLED-f)が有用であった1例
齋藤 慎野口 誉史神宮 宏臣田中 俊之塩野 昭彦町田 昌巳杉戸 美勝金子 克己
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2016 年 7 巻 1 号 p. 80-83

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抄録

症例は69歳,男性。急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)の診断にて入院,冠動脈造影(CAG)にて左冠動脈前下行枝(left anterior descending coronary artery:LAD)#6 100%の狭窄を認め,経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI )を施行した。PCI施行後,尿路感染症を契機に,うっ血性心不全が増悪,AKI・心原性肺水腫・敗血症を合併した。呼吸困難に対し人工呼吸管理を行い,AKIに対してCHDFを導入した。導入後hemofilterが頻回に凝固し,CHDFの継続が困難となった。そこで,超低効率血液濾過透析(Super Low Efficiency Dialysis with filtration:SPLED-f)を施行した。ダイアライザはVPS-11HA(1.1m2)を使用し,施行条件は血液流量(QB)100mL/min,透析液流量(QD)2,500mL/h,濾過流量(QF)500mL/h,連日7時間とした。SPLED-f 18回目終了後,人工呼吸器を離脱し,IHDに移行できた。SPLED-fにより循環動態に与える影響を最小限にしながら,体液バランスの維持,電解質補正・尿毒症物質の除去,代謝性アシドーシスの改善が十分達成され,良好に経過した。出血性素因があり,抗凝固薬の投与量を減らしたい,設備の事情からCRRTは困難であるなどの場合,SPLED-f は重要な選択肢の1つになり得ると思われる。

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© 2016, 特定非営利活動法人 日本急性血液浄化学会
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