日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
7 巻, 1 号
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総説
  • 高味 良行
    2016 年7 巻1 号 p. 3-9
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    心臓手術周術期管理における血液浄化が果たす役割について,4点に分けて概説する。①血液透析依存慢性腎不全患者の管理:簡素化した間欠的透析にて対応できる。術前2日連日透析にて手術に臨み,術中人工心肺中は限外濾過のみで管理し,術翌日から間欠的通常透析を行う。②術後急性腎不全患者の管理:持続的または間欠的血液浄化が適用される。③術中人工心肺中の水分出納管理:血液濃縮・術後出血量減少・術後呼吸/心機能の改善を目的として,積極的希釈限外濾過が適用される。④術後体液過剰是正・浮腫改善の管理:低体温・人工心肺時間延長などで体液過剰となった場合には,尿量が確保されていても,術後早期に積極的に持続的血液浄化を導入し,計画的除水にて浮腫改善を図る。

  • 藤島 清太郎
    2016 年7 巻1 号 p. 10-12
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    急性呼吸促迫症候群(Acute respiratory distress syndrome:ARDS)は,種々の原因や基礎傷病に続発して急性に発症する低酸素血症で,胸部X線上両側肺野に浸潤影を認め,かつ心不全,腎不全,過剰輸液などによる静水圧性肺水腫のみでは説明できない病態として診断される。2012年には新たなBerlin定義が公表された。このなかで“ARDS”は従来急性肺損傷(acute lung injury:ALI)と呼ばれていた軽症病態をも包含する概念となり,今後ALIの用語は使用されないことになった。診療指針としては,日本呼吸器学会が2010年に公表した「ALI/ARDS診療のためのガイドライン第2版」が最新であるが,現在関連学会が,合同で改訂第3版を作成中である。本稿では,治療に関するガイドラインおよびそれ以降のエビデンスの一端を紹介する。

  • 服部 憲幸, 渡邉 栄三, 安部 隆三, 中田 孝明, 立石 順久, 高橋 和香, 松村 洋輔, 織田 成人
    2016 年7 巻1 号 p. 13-19
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    近年,過剰に産生されたメディエータを血液浄化法により除去することが,敗血症性多臓器不全の予防,治療につながると考えられているが,エビデンスレベルの高い報告は少ない。それらのメディエータは施行条件の工夫により,濾過,透析,吸着いずれの原理でも除去可能であるが,濾過や透析の効率を大幅に増加させる方法では薬剤や栄養素などの有用物質の喪失が大きく,前者は複数の大規模randomized control study(RCT)で有用性が否定されている。他方,ポリメチルメタクリレート膜ヘモフィルターやAN-69ST,oXiris®などのサイトカイン吸着ヘモフィルター(CAH)を用いた血液浄化法は,複数のcase seriesで有用性が示されている。CAHの有用性をさらに証明するためには大規模RCTを行う必要がある。CAHの有用性を示したcase seriesは対象症例の重症度が極めて高く,今後計画されるRCTでは,サイトカイン血中濃度の測定や重症度スコアなどにより重症例のみを抽出することが重要である。

  • 五十嵐 真里, 草薙 紀子, 池崎 弘之, 栗田 康生
    2016 年7 巻1 号 p. 20-25
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    近年,わが国における医療の高度化・複雑化が進むなかで,厚生労働省は,質が高く安全な医療を提供するために,「チーム医療」推進として,医師以外の医療職種者の裁量権拡大を目指してきた。さまざまな論議の末,施策の1つとして「特定行為に係る看護師の研修制度」が創設された。これは,診療の補助行為のなかの一定の行為を「特定行為」と定め,その研修を修了した看護師が高度な臨床実践を行うための制度で,医療機器の操作や薬剤投与関連など38行為あり, 急性血液浄化療法に関するものもあげられた。われわれは, これまでの急性血液浄化療法における各職種の役割に関する文献レビューを行い,この制度創設による急性血液浄化療法への影響について検討した。その結果,「特定行為を行う看護師」の存在は,「患者にタイムリーな処置の提供」,「医師の業務量の軽減」,「看護師のモチベーション向上」,「急性血液浄化療法の標準化」などに貢献する可能性があることが考えられた。

原著
  • 白井 純宏, 早野 恵子, 前原 潤一, 具嶋 泰弘, 井上 浩伸, 松尾 尚美, 副島 一晃, 渡邊 紳一郎, 町田 二郎, 小妻 幸男, ...
    2016 年7 巻1 号 p. 26-30
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    急性血液浄化において重症度スコアを算出し患者の予後推測を行うことは治療法の選択のみならず医療資源の有効利用の点から重要であり,その有用性について報告した(透析会誌2009;42:761-7.)。初回調査ではSOFA 9点以下,MODS 5点以下,救命指数6点以下の場合は全例生存しており,SOFA 15点以上,MODS 14点以上,救命指数 10点以上のいずれかを満たせば100%死亡していた。今回われわれは2013年4月から2014年5月までの14ヵ月間で急性血液浄化を行った14症例のうち敗血症性ショックの5例について再調査を行った。重症度スコアとしてSOFA, MODS, 救命指数の3つを用い5症例中1例のみ透析前のSOFAスコアが15点以上かつ救命指数10点以上にもかかわらず生存していた。本症例では閉塞性腎盂腎炎による敗血症性ショックに対し速やかに外科的処置が施行されており,EGDTに準じた輸液療法とPMX-DHPにより腎障害が速やかに改善し,最終的に救命することができた。重症度スコアが高いにもかかわらず生存している例も存在し,予後推測の精度をより上げるためには今後の症例の集積が望まれるところである。

  • 栗原 佳孝, 小林 裕太, 後田 洋輔, 塚尾 浩, 小林 こず恵, 小久保 謙一, 小林 弘祐
    2016 年7 巻1 号 p. 31-37
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    中空糸内径240μm,膜面積1.8m2のCH-1.8Wと中空糸内径200μm,膜面積2.1m2のBK-2.1Pのポリメチルメタクリレート材質の2種類を用いて,膜面積と中空糸内径の違いがフィルタのライフタイムと総蛋白吸着量に及ぼす影響を検討した。持続血液濾過を模擬した長時間in vitro実験を,血液流量100mL/min,補液・濾液流量10mL/minで施行した。TMPやAV差圧ははじめ安定したが,一定時間経過後から急激に上昇した。フィルタのライフタイムは,膜間圧力差(TMP)と中空糸内圧力損失(AV差圧)が200mmHgに達した時間,1時間あたりのTMPとAV差圧の変化が15mmHg/hr以上となった時間から評価したが,それらはCH-1.8WとBK-2.1Pでほぼ同じであった。一方,総蛋白吸着量はBK-2.1PがCH-1.8Wに比べ,有意に高値を示し,血中蛋白濃度の低下が有意に大きくなった。

  • 福田 理史, 高須 修, 山下 典雄, 鍋田 雅和, 山香 修, 木嶋 涼二, 嘉松 翔, 深水 圭, 奥田 誠也, 坂本 照夫
    2016 年7 巻1 号 p. 38-43
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    CRRT施行直前の血液検査項目から回路内凝固を予測し得る指標について検討した。2011年1月~2012年6月に久留米大学病院高度救命救急センターで加療した重症敗血症患者43例を対象とした。24時間以内に回路内凝固をきたした凝固群(16例)と36時間以上回路内凝固を生じなかった非凝固群(27例)に分類し2群間比較した。乳酸値,血小板数,TAT値で有意差を認め,以上3項目で多変量解析を行うと,乳酸値(オッズ比:2.333,95% CI:1.122-4.854,p=0.023),血小板数(オッズ比:0.802,95% CI:0.674-0.954,p=0.013),TAT値(オッズ比:0.860,95% CI:0.761-0.971,p=0.015)それぞれが回路内凝固の危険因子であった。CRRT開始時の乳酸値,血小板数,TAT値で,CRRT開始24時間以内の回路内凝固を予測し得る可能性がある。

第26回日本急性血液浄化学会学術集会Best Presentation Award(BPA)受賞論文
原著
  • 山﨑 章生, 坪 敏人, 宮庄 拓, 廣田 和美
    2016 年7 巻1 号 p. 44-50
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    【目的】今回,ヘモフィール CH (CH-1.8W TORAY)とsepXiris 150 (AN69ST Baxter)でCytokine吸着特性を比較したので報告する。【方法】ブタ(n=7)体重17±3kgを使用し,30μg/kgのEndotoxin(ET)を30分で投与。終了時vascular accessから同時に持続的血液濾過(CHF)を開始した。測定項目はIL-6,TNF-α,IL-1β,IL-8とし,1hr,2hr,4hr,6hrの血漿clearance(CL)と1hr,2hr,4hr,6hrの吸着CLを計算した。【結果】血漿CLはIL-8の6hrでAN69ST膜が(32.66±17.01mL/min)と高かった(p<0.05)。吸着CLはTNF-αとIL-8の6hrでAN69ST膜が高かった(p<0.05)。IL-6とIL-1βの吸着CLは4hrと6hrでPMMA膜が高かった(p<0.05)。IL-6はPMMA膜で,ほとんど濾液に排泄されず,IL-8はAN69ST膜で,濾液に全く排泄されなかった。また,TNF-αはPMMA膜で血漿濃度が低下した後期に大量に濾液に排泄された。【結論】今回の実験でPMMA膜とAN69ST膜の吸着特性の違いが明確となった。

原著
  • 澤田 真理子, 上田 和利, 土本 啓嗣, 松尾 康司, 徳増 智子, 吉崎 加奈子, 久保田 真通, 高橋 章仁, 渡部 晋一, 脇 研自 ...
    2016 年7 巻1 号 p. 51-57
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    【目的】新生児集中治療室(NICU)における急性腎障害(AKI)の発症頻度と予後を検討した。【方法】2007年9月~2010年8月に当院NICUに入院した1,059例を対象とした。対象を, 超低出生体重児 (ELBW) 117例, 極低出生体重児 (VLBW) 96例,低出生体重児 (LBW) 453例,その他 393例の4群に分け,AKI発症率・発症因子と腎代替療法施行率,死亡率を,診療録を用いて後方視的に調査した。AKIの定義はproposed neonatal AKI分類を用いた。【結果】AKI発症率は14.8%,低体重児ほど有意に高率であった。腎代替療法の施行率は1.2%,低体重児ほど有意に高率であった。死亡率はAKI患者で有意に高値であった(AKI 18.5%,non-AKI 1.8%)。ELBWとVLBWでは死亡率に差はなかった。【結論】未熟児・新生児のAKI発症率は高く,AKIの死亡率は有意に高かった。一方でELBWとVLBWでは,AKIと死亡率に関連はなかった。

  • 武田 弘隆, 内田 義男, 曽我部 篤史, 福元 まゆみ, 吉永 拓真, 竹澤 真吾
    2016 年7 巻1 号 p. 58-63
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    エンドトキシン吸着除去療法+持続的血液濾過透析併用法の臨床成績を後方視的に解析し,本治療の予後関連因子について検討した。対象は,2012年10月~2015年3月の期間に当院集中治療室において重症敗血症,敗血症性ショックと診断され,エンドトキシン吸着除去療法+持続的血液濾過透析併用法を施行した59症例(男性22例,女性37例・平均年齢70.3±12.0歳)。対象症例全体の28日生存率は66.1%であった。単変量解析では,APACHEⅡscore(≧25),SOFA score (≧10),Catecholamine Index変化率(%)(≧0),血中乳酸値(≧4mmol/L),血中乳酸値変化率(%)(>0),血小板数(≦12×104μL)の6項目が選択された(P<0.05)。多変量解析では,Cox比例Hazard modelを用い,Stepwise法の結果,有意確立の順にCatecholamine Index変化率(%)(≧0),APACHE Ⅱ score(≧25),血中乳酸値変化率(%)(>0),血小板数(≦12×104μL)の4項目が予後規定因子として選択された(P<0.05)。

症例報告
  • 山田 成美, 日宇 宏之, 増田 幸子, 中道 親昭, 手島 秀剛, 高山 隼人
    2016 年7 巻1 号 p. 64-67
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    33 歳,男性。乳児期に単心室症および肺動脈閉鎖症と診断され,20歳頃より慢性腎不全が進行,30歳頃より感染などを契機に腎不全急性増悪を繰り返すようになり,その際一時的な血液浄化を要した。32歳時肺炎の診断で入院,経過中喀血後に腎機能悪化し,救命救急センターでの血液浄化が必要となった。全身状態を考慮し持続血液濾過透析を選択,以後半年におよぶ血液浄化療法を行った。本症例はチアノーゼ型先天性心疾患に合併したチアノーゼ腎症と考えられ,進行した慢性腎不全に対し長期の血液浄化療法を施行したまれな1例であり,報告する。

  • 安達 普至, 竪 良太, 鶴 昌太, 鮎川 勝彦
    2016 年7 巻1 号 p. 68-71
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    【背景】劇症型溶血性レンサ球菌感染症(streptococcal toxic shock syndrome:STSS)は,急速にショック・多臓器不全を呈する致死率の高い感染症であるが,その病態はStreptococcal pyrogenic exotoxin による高サイトカイン血症である。【症例】71歳,男性。発熱,上腹部痛を認め,急性汎発性腹膜炎疑いで緊急開腹手術を行った。上腹部を中心に膿性腹水を認めたが消化管穿孔はなく,洗浄ドレナージ術を行った。術後,敗血症性ショックに対してPMX-DHPとCRRT(AN69ST膜)を直列回路で施行すると,循環動態は速やかに改善した。血液と腹水培養からStreptococcus pyogenes(GAS)が検出され,GASよる原発性腹膜炎と診断した。【結論】STSSに対して,サイトカイン吸着能を有するAN69ST膜を使用したCRRTとPMX-DHPが有効であると考えられたが,今後さらなる研究が必要である。

  • 早川 聖子, 西田 修, 中村 智之, 原 嘉孝, 山下 千鶴, 柴田 純平, 新美 太祐, 河田 耕太郎, 内山 壮太, 秋山 雅慶, 小 ...
    2016 年7 巻1 号 p. 72-75
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    腫瘍崩壊症候群(Tumor Lysis Syndrome:TLS)を発症していたが,間歇的高効率血液浄化療法(Sustained high-efficiency daily diafiltration using a mediator adsorbing membrane:SHEDD-fA)を併用し安全に抗腫瘍療法を行えたBurkittリンパ腫の症例を経験した。【症例】60代男性。肺炎とDICを併発しICUに入室。代謝性アシドーシスと高K血症,高尿酸血症,無尿を認めた。ただちにSHEDD-fAを開始し,徐々に全身状態が改善。SHEDD-fAを継続しつつ,第2,3 ICU病日にプレドニゾロン 1mg/kg/日を投与し,TLSの悪化を認めないことを確認し,CHOP(Cyclophosphamide:シクロフォスファミド,Hydroxydaunorubicin:ダウノルビシン,Vincristine:ビンクリスチン,Predonisolone:プレドニゾロン)療法を開始。TLSによる有害事象は認めなかった。危機的なTLSを伴う症例の抗腫瘍療法であっても,SHEDD-fAにより安全に施行できる可能性が示唆された。

  • 森谷 しのぶ, 瀧 史香, 長谷川 正宇, 藤丸 拓也, 金 学粋, 小松 康宏
    2016 年7 巻1 号 p. 76-79
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    47歳女性。他院で神経性食思不振症と診断されていた。入院7日前から食事摂取量が低下し意識障害で当院へ救急搬送された。来院時ショック状態であり心電図上は心室調律であった。検査所見は,Na 95mEq/L,K 7.7mEq/L,BUN 185mg/dL,Cr 10.7mg/dL。高度の脱水・急性腎障害の診断にて,補液・昇圧剤開始後も無尿は遷延し,第2病日より透析療法を行った。透析開始時の血清Na値は100mEq/Lであり,急速なNa補正に伴う浸透圧性脱髄症候群の発症予防のために,持続的血液濾過(continuous hemofiltration:CHF)モード,Qb 100mL/分, Qf 500mL/時,返血側のチャンバーから5%ブドウ糖液を200mL/時で補充する後希釈を行い,同量分を除水することで返血側の血清Naが100mEq/Lとなるように濃度調整を行った。第3病日には透析を離脱し第22病日に転院。高度低Na血症に対し安全に透析を行えた貴重な1例であり報告する。

  • 齋藤 慎, 野口 誉史, 神宮 宏臣, 田中 俊之, 塩野 昭彦, 町田 昌巳, 杉戸 美勝, 金子 克己
    2016 年7 巻1 号 p. 80-83
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    症例は69歳,男性。急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)の診断にて入院,冠動脈造影(CAG)にて左冠動脈前下行枝(left anterior descending coronary artery:LAD)#6 100%の狭窄を認め,経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI )を施行した。PCI施行後,尿路感染症を契機に,うっ血性心不全が増悪,AKI・心原性肺水腫・敗血症を合併した。呼吸困難に対し人工呼吸管理を行い,AKIに対してCHDFを導入した。導入後hemofilterが頻回に凝固し,CHDFの継続が困難となった。そこで,超低効率血液濾過透析(Super Low Efficiency Dialysis with filtration:SPLED-f)を施行した。ダイアライザはVPS-11HA(1.1m2)を使用し,施行条件は血液流量(QB)100mL/min,透析液流量(QD)2,500mL/h,濾過流量(QF)500mL/h,連日7時間とした。SPLED-f 18回目終了後,人工呼吸器を離脱し,IHDに移行できた。SPLED-fにより循環動態に与える影響を最小限にしながら,体液バランスの維持,電解質補正・尿毒症物質の除去,代謝性アシドーシスの改善が十分達成され,良好に経過した。出血性素因があり,抗凝固薬の投与量を減らしたい,設備の事情からCRRTは困難であるなどの場合,SPLED-f は重要な選択肢の1つになり得ると思われる。

短報
技術・工夫
  • 白井 邦博, 吉田 省造, 土井 智章, 中野 道代, 柚原 利至, 中野 志保, 鈴木 浩大, 豊田 泉, 小倉 真治
    2016 年7 巻1 号 p. 86-91
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    【目的】腎代替療法を要した重症敗血症/敗血症性ショックに対して栄養管理プロトコールを導入し,結果と課題を検討した。【方法】生存群(A群:32例)と死亡群(D群:16例)を比較した。【結果】経腸栄養(EN)開始時間に差はなかった。10日目のエネルギー充足率と蛋白量は,A群:111.9±11.7%(EN:93.7±18.6%)と1.3±0.2g,D群:112.4±19.9%(EN:86.0±28.4%)と1.3±0.4gで差はなかった。累積水分バランスはD群で有意に高く(p<0.001),続発性感染率はD群で高い傾向(p=0.068)だった。D群は14日目で総蛋白量とアルブミン値が有意に低く,CRP値と白血球数が有意に高かった。【まとめ】栄養管理プロトコールにより,重症度に関わらずEN主体で栄養量を充足できた。

  • 井上 和明, 高橋 寛, 与芝 真
    2016 年7 巻1 号 p. 92-95
    発行日: 2016/06/01
    公開日: 2022/04/02
    ジャーナル フリー

    人工肝補助療法の急性肝不全治療における役割は,患者の肝臓が再生するか,適切な移植ドナーが見つかるまで患者をできるだけ良好な状態に維持することにある。本邦では内科集中治療が中心となる時期が長く,臓器提供者の少ない状況下で人工肝補助療法は独自の発展を遂げた。本邦で用いられる人工肝補助療法の特徴は大量の緩衝液で血液を浄化し,体内分布容積の大きな水溶性の毒性物質を除去して,高率に患者の覚醒を得ることにある。現在最も注目されている方法はオンライン血液濾過透析法(hemodiafiltration:HDF)である。本法により前希釈法を用いて置換液を注入すれば,透析中のトラブルも少なく管理が容易で,かつ高い昏睡覚醒率を得ることができる。今後急性肝不全の血液浄化療法として標準化すべき方法であるが,その際に肝不全用の透析液の開発と,安定した体外循環を施行するためのバスキュラーアクセスと体液量管理の指針が必要と考えられる。

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