日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
症例報告
メタノール中毒に対し浸透圧ギャップとアニオンギャップを指標に緊急血液透析を行った1例
西川 真那島田 典明澤田 真理子福島 正樹浅野 健一郎
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2018 年 9 巻 1 号 p. 32-35

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抄録

症例は30歳代,男性。24時間前にメタノールを95mL摂取し,頭痛が出現したため搬送された。搬送時のバイタルサインは安定しており,pHは7.229でアニオンギャップ(AG)は23.7mEq/Lであった。葉酸の投与や補液を行うもAGは29.0mEq/Lに上昇した。血液透析(HD)を3時間行い,AGは15.6mEq/Lに,浸透圧ギャップ(OG)は62.7mOsm/kgから33.2mOsm/kgに低下した。HD終了から5.5時間後には,OGは26.9mOsm/kgとさらに低下したが,AGは16.1mEq/Lに上昇した。このためHDを3時間追加しAGは9.1mEq/Lまで低下した。視覚障害を含め後遺症なく退院できた。メタノール中毒の治療では,即時的な測定が困難な血中メタノール濃度に代わり,メタノールにより上昇するOGと代謝産物の蟻酸により開大するAGを指標に治療を行うことが有用と考える。

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© 2018, 特定非営利活動法人 日本急性血液浄化学会
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