症例は30歳代,男性。24時間前にメタノールを95mL摂取し,頭痛が出現したため搬送された。搬送時のバイタルサインは安定しており,pHは7.229でアニオンギャップ(AG)は23.7mEq/Lであった。葉酸の投与や補液を行うもAGは29.0mEq/Lに上昇した。血液透析(HD)を3時間行い,AGは15.6mEq/Lに,浸透圧ギャップ(OG)は62.7mOsm/kgから33.2mOsm/kgに低下した。HD終了から5.5時間後には,OGは26.9mOsm/kgとさらに低下したが,AGは16.1mEq/Lに上昇した。このためHDを3時間追加しAGは9.1mEq/Lまで低下した。視覚障害を含め後遺症なく退院できた。メタノール中毒の治療では,即時的な測定が困難な血中メタノール濃度に代わり,メタノールにより上昇するOGと代謝産物の蟻酸により開大するAGを指標に治療を行うことが有用と考える。