日本急性血液浄化学会雑誌
Online ISSN : 2434-219X
Print ISSN : 2185-1085
9 巻, 1 号
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特別報告
  • 医療者側と血液浄化機器製造企業双方における取り組みと課題
    塚本 達雄, 宮田 真紀子, 平田 憲子, 細井 信幸, 松村 由美, 秋葉 隆
    2018 年 9 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

    2011年に発生した血液浄化器取り違えによる患者死亡事例の問題点として,血液浄化器形状がすべて類似していることが指摘された。医療ガスおよび経腸栄養経路の誤接続防止には接続部形状変更が極めて有効であることが明らかとなっているため,関連学会などより,血液浄化器共通のスリップイン方式(ISO8637)である血漿分離器透析液ポート形状を血液濾過器用回路とは接合できない規格に変更することが提案された。この提案に関して,医療者側と血液浄化機器製造企業双方で同ポート形状変更に関して協議を重ね,厚生労働省の指導のもとで国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)の新しい医療機器接合部規格にあわせたルアーロック方式(ISO80369-7)へ形状変更することが決定し,2018年での承認申請に向けて準備が進められている。

解説
  • 宮崎 真理子, 藤倉 恵美, 山本 多恵, 吉田 舞, 福士 太郎, 山田 元, 中道 崇, 佐々木 俊一, 小松 亜紀, 小林 淳, 阿部 ...
    2018 年 9 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

    医療安全は医療機関の責務として法的にも定められている。しかし,血液浄化療法は急性であっても慢性的な維持治療であっても,すべてのプロセスで医療事故の発生要因を有する医療行為といえる。機器の改良や手順の改善は事故の頻度や被害を小さくすることはできても,事故を皆無にすることはできない。とくに急性血液浄化療法を要する患者は重篤で変化が早く,複数の生命維持デバイスが使われることも多い。さらに,多職種,多領域の医療者が,各自の専門的な視点でかかわる診療体制では,病状の理解や情報共有に細心の注意が必要である。これらが急性血液浄化療法における医療安全上の課題である。したがって,急性血液浄化療法を実施する組織は,職種や専門領域の枠を超えて教育や検証活動ができ,メンバーがフラットに意見交換ができる環境,事故発生時には,機敏で柔軟に対応する行動力や再発防止策を立てる体制を整えた高信頼性組織として機能する必要がある。

原著
  • 福田 理史
    2018 年 9 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

    2014年1月から2016年3月の期間に久留米大学病院高度救命救急センターに搬入された敗血症性ショック症例のうち,KDIGO基準で血清クレアチニン値による基準と尿量による基準の急性腎障害重症度にmismatchが生じた症例で,血清クレアチニン値による基準が重症であった群をsCr群,尿量による基準が重症であった群を尿量群とし2群間比較した。sCr群は26症例,尿量群は20症例であった。臨床的重症度には差を認めなかったが,sCr群と比較し尿量群は,1日目から3日目までの尿量が1,600±1,400 vs 530±440mL/day,1,010±1,080 vs 320±390mL/day,980±720 vs 430±380mL/dayと有意に少なく,3/26 vs 8/20と有意に死亡症例が多かった。同程度の臨床的重症度であれば,尿量による基準が重症であった症例のほうがICU退室時転帰が悪い可能性がある。

  • 大久保 範子, 佐藤 隆太, 松岡 厚志, 朝倉 受康, 畠山 卓, 熊谷 誠
    2018 年 9 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

    持続的血液浄化療法は救急・集中治療で循環動態が不安定な尿毒症,肝不全,敗血症などの病態改善に有用な治療法である。使用される血液回路は,長時間安全に施行できるだけでなく災害時にも安定して供給される必要があり,統一した安全規格が必要である。2012年に日本臨床工学技士会から「持続的血液浄化療法continuous blood purification therapy (CBP)装置・回路の安全基準についての提言 (Ver.1.01)」が提案され,回路は7項目の安全規格が示されたが現在も各製造会社の独自規格で製造されている。今回,2種類の回路を対象にして安全規格7項目の充足の検証と,追加でプライミングボリューム,ポンプセグメント部回路耐用時間,静脈側回路アクセスポート位置,抗凝固薬注入ライン位置の4項目の相違の検証を行った。安全規格7項目を充足する回路はなく,追加4項目も2回路間で異なった。将来,提言の普及と標準規格の装置・回路への改良が望まれる。

症例報告
  • 神宮 宏臣, 新井 よしみ, 齋藤 慎, 大山 裕亮, 田中 俊之, 塩野 昭彦, 町田 昌巳
    2018 年 9 巻 1 号 p. 28-31
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

    【症例1】65歳男性。三叉神経痛にてカルバマゼピン(CBZ)400mg/dayが処方され,4日後に眩暈などの症状が出現した。前希釈On-line HDF施行前の血清CBZ濃度は8.8μg/mLと有効治療域であった。前希釈On-line HDF施行後は6.8μg/mLに低下し,眩暈などの症状も改善した。【症例2】62歳男性。ガンマナイフ治療後,CBZ 400mg/dayが処方され,2日後からふらつきが出現,体動困難で当院に救急搬送された。来院時,眩暈,嘔気などの症状があり,心拍数(HR)は40回/分と徐脈を呈していた。血清CBZ濃度は15.8μg/mLと高値を示した。HD終了時,血清CBZ濃度は8.8μg/mL,HRが60回/分と改善を認め,眩暈などの症状も消失した。本症例のようにCBZは常用量でも中毒症状が現れることがある。このような中毒症状に対して,通常の透析療法により血清CBZ濃度低下が可能であった。

  • 西川 真那, 島田 典明, 澤田 真理子, 福島 正樹, 浅野 健一郎
    2018 年 9 巻 1 号 p. 32-35
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

    症例は30歳代,男性。24時間前にメタノールを95mL摂取し,頭痛が出現したため搬送された。搬送時のバイタルサインは安定しており,pHは7.229でアニオンギャップ(AG)は23.7mEq/Lであった。葉酸の投与や補液を行うもAGは29.0mEq/Lに上昇した。血液透析(HD)を3時間行い,AGは15.6mEq/Lに,浸透圧ギャップ(OG)は62.7mOsm/kgから33.2mOsm/kgに低下した。HD終了から5.5時間後には,OGは26.9mOsm/kgとさらに低下したが,AGは16.1mEq/Lに上昇した。このためHDを3時間追加しAGは9.1mEq/Lまで低下した。視覚障害を含め後遺症なく退院できた。メタノール中毒の治療では,即時的な測定が困難な血中メタノール濃度に代わり,メタノールにより上昇するOGと代謝産物の蟻酸により開大するAGを指標に治療を行うことが有用と考える。

  • 元 志宏, 小川 晃生, 金井 弘次, 野辺 香奈子, 野平 由香, 池田 直史
    2018 年 9 巻 1 号 p. 36-38
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

    【背景】劇症型溶血性レンサ球菌感染症(Streptococcal toxic shock syndrome: STSS)は発病から急激に病態が進行し,死に至る重篤な感染症である。Streptococcus pyogenesが産生する発熱毒素により高サイトカイン血症となり,ショックを呈する。【症例】65歳,女性。4日前より38度台の発熱と腰痛が出現した。肝機能障害や腎機能障害も認め,入院した。qSOFAの2項目を満たし敗血症を疑い,補液やノルアドレナリンを投与したが,循環動態は改善しなかった。血液培養よりA群レンサ球菌が検出されSTSSと診断し,敗血症性ショック,急性腎障害に対してAN69ST膜を用いたCRRTを開始した。CRRT開始後より血圧は上昇し,ショックを離脱した。【結論】サイトカイン吸着能を有するAN69ST膜を用いたCRRTは,STSSに対して循環動態の改善に有効であると考えられたが,さらなる検討が必要である。

技術・工夫
  • 中永 士師明, 古屋 智規, 佐藤 佳澄, 奥山 学
    2018 年 9 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

    Plasma exchange with dialysis (PED)は選択的膜型血漿分離器(エバキュアープラスEC-2A)を用いて単純血漿交換を行いながら,その中空糸外側に透析液を流す血液浄化療法である。continuous PED (cPED)療法は48時間かけてPEDを緩徐に施行する。今回,急性肝不全に対してcPED療法を施行し,その有用性について検討した。cPED施行によりフィブリノゲン,総蛋白は有意に増加,INRは改善,クレアチニンは低下した。急性肝不全に対してcPED療法は急性血液浄化療法の一つとして応用できる可能性がある。

  • 安丸 諒
    2018 年 9 巻 1 号 p. 44-47
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

    救命救急センターに搬送される患者の多くは重篤な病態であり,クリティカルケア領域の現場において急性血液浄化は汎用される治療法の一つとなっている。急性血液浄化の適応となる疾患は急性腎障害や急性心不全,敗血症性ショックなど多岐にわたる。そのためクリティカルケア領域の看護師は急性血液浄化についての知識も求められることになる。血液浄化中に看護師が臨床で多く経験するトラブルは治療開始時のバイタルサインの変動や施行中のアラーム対応が大部分を占めており,その他バスキュラーアクセスカテーテルに関連した出血や医療機器関連圧迫創傷といったトラブルもある。トラブルの緊急性が高い場合や看護師のみで対応困難な場合は適切なタイミングで医師,臨床工学技士への報告も行わなければならない。患者にとって安全で治療継続性の高い急性血液浄化を実現させるためには,医師,臨床工学技士との協働が必要である。

  • 江間 信吾, 辻 孝之, 加藤 明彦
    2018 年 9 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

    急性期における血液浄化療法は,持続的血液濾過透析(CHDF)や血漿交換療法,直接血液灌流などがある。また慢性維持透析患者に対する周術期の血液透析やCHDFも,急性期の血液浄化療法に含まれる。これら急性血液浄化療法は,患者の病態を改善することを目的として施行されるが,人的ミスによる死亡事例も報告され安全の確保は確立していない。臨床工学技士の急性血液浄化療法に対する医療安全への関与は,医療事故の分析を行いチェックシートなどへの応用や他職種間での情報共有,事故事例に対して製造販売業者への情報提供と製品開発への協力などがある。インシデントレポート報告などを活用し,詳細な事例解析と情報共有を行い,具体的な対策を検討することが重要である。

  • 功力 未夢, 佐川 竜馬, 髙梨 隼一, 平尾 健, 齋藤 拓郎, 岡本 裕美, 日野 由香里, 加藤 文彦, 大沢 光行, 別所 郁夫, ...
    2018 年 9 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

    急性血液浄化装置は,主に持続的血液浄化療法(CBP)など長時間の血液浄化を行うことを目的とした装置である。急性血液浄化装置において血液を加温する方法は,透析患者に使用される血液透析装置と異なるため,血液流量,透析液および補充液の条件により十分に加温されない状態で治療が行われることが予想される。そこで,急性血液浄化装置における加温器の性能について検討した。各装置の透析液流量および補充液流量を増加したところ,加温器後の温度は低下した。急性血液浄化装置において補充液流量の増加は,補充液が十分に加温されずに血液に流入することが示唆された。よって,血液回路の温度低下が生体温度の低下の一因になると考えられるため,加温器の性能を理解し使用する必要がある。

  • HEMOFEEL®SHG-1.0とEXCELFLO®AEF-10の比較
    佐藤 幸博, 金子 修三, 柳澤 克哉, 高野 知夫, 道小島 明美, 川瀬 友則, 塚本 雄介
    2018 年 9 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2018/06/01
    公開日: 2022/02/08
    ジャーナル フリー

    同じPolysulfone膜である,HEMOFEEL®SHG-1.0(SHG)とEXCELFLO®AEF-10(AEF)の両方を使用して,CRRT施行中の経時的な圧力モニタならびにヘモフィルター内の凝固血栓に関して,両者の違いを比較検討した。【結果】入口圧はSHG群が持続的に高い傾向であり,一方,返血圧は両群とも同程度であり,差圧はSHG群が統計学的に有意に大きかった。また,SHG群では,CRRT開始16時間以降で入口圧の上昇を認めたものの膜間圧TMPは20~30mmHgで経過した。治療終了後のヘモフィルター内の残血は,AEF群が3回のうち2回であったのに比しSHG群では全く認めなかった。今回の検討でSHG群がAEF群と比べて,差圧が上昇し,ヘモフィルター内の凝固血栓の回避で優位性を示したのは,血液線速度が高くなるようなSHGの構造設計で説明できる。【結論】CRRTに使用するPolysulfone膜ではSHGの選択がヘモフィルター内の凝固血栓の回避の点において有用な可能性がある。

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