抄録
前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration : FTLD)は,前頭・側頭葉に限局して進行性の変性を呈し,行動障害や言語障害を主徴とする非アルツハイマー型変性性認知症の一群を指す臨床概念である。家族性 FTLD の原因遺伝子として,タウ(microtubule-associated protein tau : MAPT),プログラニュリン(progranulin : PGRN),バロシン含有蛋白(valosin-containing protein : VCP),charged multivesicular body protein 2B(CHMP2B)などが同定されている。ほとんどのFTLD 例では,神経細胞あるいはグリア細胞内に,特定の蛋白質が凝集し,封入体を形成する。その主要構成蛋白として,これまでタウ,TAR DNA-binding protein of 43 kD(TDP-43),fused in sar-coma(FUS)が同定され,FTLD-tau,FTLD-TDP,FTLD-FUS という 3 つの主要な病理グループを形成している。TDP-43 と FUS は,遺伝子発現や転写の調節という類似の生理機能を有する核蛋白であり,その遺伝子変異によって ALS あるいは FTLD を発症するという共通性から,両疾患の病態解明の鍵として現在注目を浴びている。蓄積したタウと TDP-43 には過剰リン酸化と断片化が生じており,病理過程に重要な役割を果たす変化と考えられているが,FUS については未だ不明な点が多い。これらの蛋白の蓄積メカニズムの解明とその抑制による治療法の開発が今後の重要な課題である。